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『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』アメリカ映画のルネサンスを可能にしたスピルバーグの「勢い」
2018.05.02
スピルバーグの早撮り=「勢い」が生み出した「活劇」の熱量
スピルバーグは早撮りで知られている。何しろ、『 レディ・プレイヤー1』と『 ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』をほぼ同時期に仕上げ、どちらも傑作という離れ業を成し遂げているくらいだ。その早撮りは『レイダース』から始まった。製作を務めたルーカスから絶対に予定の撮影日数を超過しないことを条件とされていたからだ。そして、その縛りがプラスに作用した。『レイダース』のメイキングでスピルバーグはこんな意味の事を語っている。
「展開の速いアクションシーンは困る、まだ撮影していないショットも撮影したと思い込んで次に進みそうになるんだ。」
この早撮りが『レイダース』に「勢い」という思わぬ効果をもたらした。その顕著な例が全翼機での格闘シーンだ。
インディと巨漢兵士の格闘、動き出す全翼機、コックピットに閉じ込められたヒロイン、溢れ出すガソリン、と様々な要素が絡み合う複雑なアクションシーンだが、流れるようなカット割りで見事な仕上がりとなっている。このような複雑なシーンは通常綿密な設計のもとに撮影されるがスピルバーグは絵コンテ(ストーリーボード)をほとんど確認せず、現場で即興的な演出を行い、勢いのまま撮影していったという。このシーンは70を超えるショットで構成されており、それを即興で撮り上げるなど神業と言えるだろう。しかし、その勢いと熱量こそが『レイダース』成功のカギだとスピルバーグは分かっていたのかもしれない。
『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』TM & (C) 1981-2016 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved. Used Under Authorization.
事実、撮影の勢いが削がれることを嫌い、彼は現場のスタッフに嘘をつくことも厭わなかった。「今のカットは失敗ではないのか?」と問われても、「そんなことはない!素晴らしかったよ!」と答えた。「撮影に失敗すると皆ウソをつく、僕みたいにね。いい映像が撮れてるさ、と。監督の多くがそうして先に進む。ウソをつくほど安く済む。撮り直しがへるからね。」
『レイダース』はそのストーリーばかりでなく、撮影現場も止まることを許されない、「連続活劇」として駆動していたのだ。その結果、スピルバーグは撮影予定日数を大幅に短縮し2,000万ドルという予算では不可能と言われた作品を見事なクオリティで完成させた。
『レイダース』は制作から35年以上を経た今見ても衰えない熱量を持っている。それはスピルバーグの演出の「勢い」が「活劇」として封入された結果なのだ。
参考資料:
「はじめて書かれたスピルバーグの秘密」フランク・サネッロ 著/中俣真知子 訳
『 インディ・ジョーンズ コンプリート・アドベンチャーズ』Blu-ray 特典映像より
『インディ・ジョーンズ レイダース 失われたアーク《聖櫃》』
Blu-ray:1,886円+税 DVD:1,429円+税
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
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