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『バルド、偽りの記録と一握りの真実』アレハンドロ・G・イニャリトゥが今の自分を吐露する”映像集”

© Limbo Films, S. De R.L. de C.V. Courtesy of Netflix

『バルド、偽りの記録と一握りの真実』アレハンドロ・G・イニャリトゥが今の自分を吐露する”映像集”

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盟友キュアロンとの関係性、撮影監督の交代



 そんなイニャリトゥのわがままを受け止め具現化したのが、『セブン』(95)、『ミッドナイト・イン・パリ』(11)、『Okja/オクジャ』(17)等、あらゆるテクニックを駆使して映像に革命を起こしてきたイラン出身の撮影監督、ダリウス・コンジだ。コンジは配信作品には珍しく65ミリフィルムで全編を撮影し、可能な限り監督のクリエイティビティに寄り添っている。


 『バードマン〜』と『レヴェナント』の2作でイニャリトゥとコラボし、アカデミー撮影賞に輝いているエマニュエル・ルベツキは、意外なことに、今回はプロジェクトには参加していない。ちなみに、ルベツキに最初のオスカーをもたらしたのはキュアロンの『ゼロ・グラビティ』(13)であり、キュアロンは『ROMA/ローマ』でもルベツキを撮影監督に迎える予定だったが、ルベツキが他プロジェクトに参加することになっていたために断念したという経緯がある。結果的に、『ROMA/ローマ』でトライした65ミリフィルムに近い画角とダイナミックレンジを持ち合わせた独特のモノクロ映像により、キュアロンは外国語映画賞(現・国際長編映画賞)、監督賞に加え撮影賞のオスカー3冠に輝いている。



『バルド、偽りの記録と一握りの真実』© Limbo Films, S. De R.L. de C.V. Courtesy of Netflix


 イニャリトゥ、キュアロン、ルベツキの関係性、似通った映像フォーマット、成功を手にした監督が目を向けた過去の自分とその偶然性。そんな符合が否が応でも脳裏を過ぎる。また、『バルド〜』の中にフェデリコ・フェリーニの『』(63)やボブ・フォッシーの『オール・ザット・ジャズ』(79)を思い浮かべる人も多いだろう。しかし『バルド〜』は、先人2人の代表作とは印象が異なるし、イニャリトゥの過去作品にあった、迂回しつつも明確な1点に向けて突き進むような牽引力も無い。その反面、交差する時空の中でのたうつ主人公の中に、たった今のイニャリトゥの本音が痛いほど透けて見え、見る側の心を捉えて離さない。視覚的には、159分間を丸ごと費やしたゴージャスなPV映像のようでもある。こんな贅沢が許される監督は他にいないだろう。


 つくづく、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥはテクニック、つまりストーリーテリングよりも技術、または見せ方の人なのだと、『アモーレス・ペロス』(00)以来となるメキシコロケを見つめながら痛感するのだった。



文:清藤秀人(きよとう ひでと)

アパレル業界から映画ライターに転身。映画com、ぴあ、J.COMマガジン、Tokyo Walker、Yahoo!ニュース個人"清藤秀人のシネマジム"等に定期的にレビューを執筆。著書にファッションの知識を生かした「オードリーに学ぶおしゃれ練習帳」(近代映画社刊)等。現在、BS10 スターチャンネルの映画情報番組「映画をもっと。」で解説を担当。




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Netflix 映画『バルド、偽りの記録と一握りの真実』

11月18日(金)より一部劇場にて公開中

12月16日(金)Netflixにて独占配信

© Limbo Films, S. De R.L. de C.V. Courtesy of Netflix

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