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『マネキン』愛と笑いとファンタジーが詰まった快作

(c)Photofest / Getty Images

『マネキン』愛と笑いとファンタジーが詰まった快作

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古き良きスクリューボール・コメディの香り



 エキセントリックなキャラクターたちが入り乱れることで笑いを生じさせ、同時にスリルを醸し出す手法は1930~40年代に流行したスクリューボール・コメディにも通じる。それもそのはず、本作はエヴァ・ガードナー主演による1948年の『ヴィナスの接吻』を元ネタにしているのだ。冴えないウィンドウ職人が、美しいマネキン人形にキスをしたら、それが人間になってしまう物語。アップテンポの展開や、自立した女性像など、この時代のスクリューボール・コメディの要素を『マネキン』は確実に受け継いでいる。


 今この映画を見直すと、スラップスティックでありながらも、多様性の21世紀を先取りしているように見えなくもない。家制度に反発するエミーや、ゲスい同僚の誘いをはねのけるロキシーには“#metoo”に通じる主張が見て取れるし、ゲイであり黒人でもあるハリウッドの、営利主義に立ち向かう姿も魅力を放つ。ちなみに本作の舞台は“友愛”の都市として知られるフィラデルフィアで、『ロッキー』(76)や『刑事ジョン・ブック 目撃者』(85)、『フィラデルフィア』(93)など、社会的な弱者を見つめた名作の舞台でもある。



『マネキン』(c)Photofest / Getty Images


 それは深読みとして置いておこう。物語はドタバタではあるが、進む方向はジョナサンのサクセスとラブのストーリーからブレることなく、まっすぐに進んでいく。成功にも愛にも試練はつきものだ。ライバル店からの引き抜きのオファーを“筋が通らない”と突き返し、恩義のあるプリンス・デパートのために尽くそうとするジョナサンは、ヘタレなアーティストと思いきや、頼もしさを増してくる。拉致されたエミーを救おうとする奔走もしかり。軟弱に思えた彼の奮闘をしっかり描いているからこそ、観客の共感を引きつけたと言っても過言ではない。





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