『マネキン』あらすじ
彫刻家志望の若者ジョナサンは、あまりにも強い芸術性へのこだわりがアダとなり、勤務先のマネキン製作会社をクビになる。そんなある日、自身の最高傑作と思っていたマネキン人形をデパートのショーウィンドウで発見。運よくそこに就職したジョナサンだったが、このプリンス・デパートは経営が傾いており、ライバルのデパートによる買収の危機にさらされていた。ジョナサンは、ある夜、そのマネキンが人間に変身して話しかけてきたことに仰天する。エミーと名乗る彼女は古代エジプトから転生を重ね、愛する者を探し求めていた。ジョナサンの前でしか人間になれないエミーは、他人の目があるとマネキンに戻る。革新的なショーウィンドウを作るために、夜ごと共同作業を始めた彼らは、次第に惹かれ合う仲に。一方で、彼らの手によるプリンス・デパートのウィンドウは評判となり、売り上げを急激に伸ばしていった。ところが、それを快く思わないライバルのデパートが、ジョナサンに執拗に嫌がらせを仕かけてくる……。
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レンタルビデオで高回転
1980年代後半、家庭にVHSが普及した時期、歩調を合わせるかのように、レンタルビデオ店も台頭。当時学生だった筆者は都内・私鉄沿線のレンタルビデオ店でアルバイトをしていたが、在庫も売り上げも右肩上がりだったと記憶している。主力はやはり劇場で大ヒットした映画だ。『ロッキー4 炎の友情』(85)や『エイリアン2』(86)『トップガン』(86)『プラトーン』(86)『ラストエンペラー』(87)『アンタッチャブル』(87)『レインマン』(88)などなどが、返却されるやすぐに貸し出される高回転を、長期にわたって続けていた。
一方で、劇場公開時にソコソコのヒットを飛ばした程度なのに、ビデオで意外にも高回転した作品も少なくなかった。たとえば、『プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角』(86)や『フェリスはある朝突然に』(86)などのジョン・ヒューズ関連作。マイケル・J・フォックスの『摩天楼はバラ色に』(86)も『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)以外の彼の主演作の中では図抜けた人気作となる。全体的に明るくてユーモラスな青春映画が多かった。
『摩天楼はバラ色に』予告
これらの作品は、最初に上げた作品に比べると大作ではないし、超話題作とも言い難い。しかし、いずれも共感を抱けるドラマがあり、ユーモアがあり、気持ちのよいロマンスがあり、なおかつ後味もよかった。気軽に利用できるレンタルビデオの強みで、このような作品はクチコミで面白さが広まり、ジワジワと人気を高めていく。ちょうど35年前の2月に日本で劇場公開された『マネキン』(87)も、まさしくそんな作品だった。