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『フェイブルマンズ』実体験に基づくダークサイド・オブ・スピルバーグ
スピルバーグにとっての“特別な一本”
本作がスティーヴン・スピルバーグの最高傑作であるかどうかは、議論の分かれるところだろう。だが少なくともスティーヴン・スピルバーグにとって、この映画が特別な一本であることは間違いない。
ベニー役を演じたセス・ローゲンは、スピルバーグがセットでしばしば感情的になり、時には涙を流していたことを明かしている。またサミーを演じたガブリエル・ラベルは、「彼は少なくとも30年ぐらい同じクルーと仕事をしているけど、今回はいつもと違う雰囲気だったと皆言っていたよ」(*3)と証言している。それだけパーソナルな想いがこの映画にはパッキングされているのだ。
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スピルバーグは、『フェイブルマンズ』で3度目のゴールデングローブ監督賞を受賞。そのスピーチで、彼はこんなコメントを残している。
「子供でいることは簡単ではない、という事実にようやく正直になる準備ができました。みんなが私のことを、サクセス・ストーリーとして見ています。でも勇気を出してみんなに語るまで、誰も本当の私を知らなかったのです」(*4)
“CRUSH”=暴力への渇望と自覚。壊れた家族。ここには、映画作りの愉悦はない。孤独に映画を撮り続けることを誓った男の、苦難と苦闘の歴史が刻まれている。ここまであからさまにダークサイド・オブ・スピルバーグを露出させてしまったことに、筆者は心から畏敬の念を抱いてしまう。
我々映画ファンにとっても、『フェイブルマンズ』は特別な一本だ。
(*1)https://www.nytimes.com/2022/11/09/movies/steven-spielberg-the-fabelmans.html
(*2)https://collider.com/the-fabelmans-ending-tony-kushner-interview/
(*4)https://variety.com/2023/film/news/steven-spielberg-golden-globes-best-director-1235482662/
文:竹島ルイ
ヒットガールに蹴られたい、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」主宰。
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配給:東宝東和
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