青春の肌、体温
『ガール・ピクチャー』では、3人の少女の顔に明滅する光が美しい。パンクスのような反抗の装いのミンミの顔は、夜のドライブシーンで暖色系の光に美しく滲んでいく。運命の出会いのようにエマと激しい恋に落ちるミンミ。二人の恋はロマンチックだ。刹那に生きるミンミとは対照的に、夢を設計しているエマ。二人はお互いを補完するような関係を築く。
そしてミンミの親友ロンコは、自身の抱える性的な興味との付き合い方が分からずにいる。セクシュアリティを探求するロンコの旅。彼女の顔には、ほのかにニキビが確認できる。ロンコを演じたエレオノーラ・カウハネンによると、ニキビを隠すつもりはさらさらなく、むしろ不完全さの象徴として積極的に作品に取り込んだのだという。
『ガール・ピクチャー』© 2022 Citizen Jane Productions, all rights reserved
ロンコがミンミのメイクを手伝いながらキャンディを頬張る美しいショットに代表されるように、本作では3人の少女それぞれの顔にフォーカスしていくショットが強い印象を残す。少女たちの顔や肌の温度が状況によって変化していく。その微かな推移を本作は見逃さない。たとえばロンコの顔をアップで捉える性交渉のシーンでは、彼女の肌から感じられる温度の変化に、期待から失望へ変わっていく感情の推移が表されている。同じようにミンミとエマのシーンでも、彼女たちの感情体験、高揚感が真正面からフォーカスされている。
少女たちの温度感を捉えるアプローチは、本作がインスピレーションを受けたという傑作ドキュメンタリー映画『オール・ディス・パニック』(16)と通じている。ブルックリンで生活する7人の十代の少女たちを追ったこの作品では、意図的に背景をピンボケぎみに捉えることで、少女たちの輪郭がくっきりと浮かびあがるようなショットが多用されている。