© 2022 Citizen Jane Productions, all rights reserved
『ガール・ピクチャー』アッリ・ハーパサロ監督 映画の中のように世の中が良い方向に向かえば【Director’s Interview Vol.302】
子どもと大人のはざま、17歳から18歳に差し掛かる3人の少女、ミンミとロンコとエマ。恋、友情、性と、10代特有の多感な時期をみずみずしく描いた北欧発の青春映画が誕生した。本作は、ノーベル平和賞を受賞した社会運動家のジェーン・アダムズにちなんで名づけられたシチズン・ジェーン・プロダクションによって製作され、第38回サンダンス映画祭ワールドシネマドラマ部門観客賞を受賞、さらに第95回アカデミー賞®国際長編映画賞部門のフィンランド代表に選出されるなど、多くの映画祭で注目を集めた話題作だ。
強い女性を主人公とした作品を作り続けることに力を注いでいるという、本作を手掛けたアッリ・ハーパサロ監督に話を伺った。
『ガール・ピクチャー』あらすじ
クールでシニカルなミンミ(アーム・ミロノフ)と、素直でキュートなロンコ(エレオノーラ・カウハネン)は同じ学校に通う親友。放課後はスムージースタンドでアルバイトしながら、恋愛やセックス、そして自分の将来についての不安や期待にまつわるおしゃべりを楽しんでいる。そんな中「男の人と一緒にいても何も感じない自分はみんなと違うのでは?」と悩み続けていたロンコは、理想の相手との出会いを求めて、果敢にパーティーへと繰り出す。一方、ロンコの付き添いでパーティーにやってきたミンミは、大事な試合を前に、プレッシャーに押しつぶされそうなフィギュアスケーターのエマ(リンネア・レイノ)と急接近する――。
Index
映画の力を信じている
Q:思春期特有の悩みである“性”について、その多様性にことさらフォーカスすることもなくナチュラルに描かれていました。この“ナチュラルさ”が成立しやすくなったここ数年の環境変化をどう思われますか。
ハーパサロ:この環境変化は喜ばしいことですね。脚本を書き始めた当初は、登場人物がカミングアウトする場面をいれるべきかどうか議論しましたが、必要無いという結論に至りました。本作には同性のカップルが登場しますが、そこを強調したいのではなく、あくまでも2人の人間が惹かれあったラブストーリーを伝えたいだけ。それを描くことが出来たのは、この映画を作ってる間に世の中が変わっていったことも大きいと思います。
『ガール・ピクチャー』© 2022 Citizen Jane Productions, all rights reserved
Q:この環境変化はここ数年で作られた映画の存在も大きいと思います。こうした映画が持つ力や役割をどう思われますか。
ハーパサロ:私は映画の力を信じています。我々がスクリーンに描いたものを観てもらうことによって、映画の中の世界を受け入れ、それが自然と現実の行動に反映される。そうやってスクリーンの中の世界が現実となっていくことを願っています。今回の映画に登場する女の子たちは誰一人として危険な目に遭いません。しかし現実世界の場合、彼女たちのような行動や服装をしていると、性的な対象に見られたり誹謗中傷されることも少なくありません。でもそうじゃない現実もあるんだと、私たちの映画を観て感じて欲しい。それでいきなり世の中が変わるとは思いませんが、映画の中の世界のように世の中が少しでも良い方向に向かえばいいなと思います。