『ガール・ピクチャー』あらすじ
クールでシニカルなミンミと、素直でキュートなロンコは同じ学校に通う親友。放課後はスムージースタンドでアルバイトしながら、恋愛やセックス、そして自分の将来についての不安や期待にまつわるおしゃべりを楽しんでいる。そんな中「男の人と一緒にいても何も感じない自分はみんなと違うのでは?」と悩み続けていたロンコは、理想の相手との出会いを求めて、果敢にパーティーへと繰り出す。一方、ロンコの付き添いでパーティーにやってきたミンミは、大事な試合を前に、プレッシャーに押しつぶされそうなフィギュアスケーターのエマと急接近する――。
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フラットな視点
相手のことが好きなのに、わざと傷つけるようなことをしてしまう。ユーモアのある一面を見せようとした言葉は、いつも相手に引かれてしまう。コミュニケーションの取り方が分からないということ以上に、自分の興味や欲望との付き合い方がよく分からない。『ガール・ピクチャー』(22)は、3人の少女たちの不完全さをありのままに愛していく。アッリ・ハーパサロは、少女たちを追憶の中に閉じ込めない。フィルムの中の少女たちは思春期の過敏な高揚感を生きている。
思春期の漂流するセクシュアリティ、そしてアイデンティティ。本作はカミングアウトに関する映画ではない。レズビアンやアセクシャルであることを干渉する者は誰一人いない。個人のセクシュアリティは、驚かれることもましてや嫌悪されることもない、何処にでもあるごく当たり前の風景として描かれている。そこに少女たちそれぞれの歓喜と混乱、否定と肯定の堂々巡り、押し潰されそうになるような感情のディテールが重ねられていく。セクシュアリティに関する拷問のような悲劇のない世界で、少女たちの激しさは平等に描かれる。フラットな地点から始まる新たな青春映画の探求。少女たちには青春という実験を試すスペースが予め確保されている。
『ガール・ピクチャー』© 2022 Citizen Jane Productions, all rights reserved
80年代アメリカ青春映画のタイポグラフィにリスペクトを捧げる、ワクワクするようなタイトルバックで始まる本作には、終始フレッシュな空気が流れている。差別の壁を物語を動かすきっかけにしないことが、どれほど貴重なことか本作は思い知らせてくれる。
カリスマ性があり、ときに攻撃的だが繊細なミンミ。ショッピングモールのスムージースタンドで、ミンミと一緒に働く愉快な親友ロンコ。ミンミと恋に落ちるフィギュアスケートに情熱を注ぐエマ。それぞれにキャラの立った3人の少女。この3人でなければ”ガール・ピクチャー”は成立しない。少女たちの高揚感をより親密に感じることができるよう、スタンダードサイズの画面が選択されていることも本作の大きな特色だ。