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『イメージズ』永遠にひび割れた映画

© 2023 Phoenix Films Holdings Limited

『イメージズ』永遠にひび割れた映画

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仮面/ペルソナ



 ロバート・アルトマンのフィルモグラフィーにとって『イメージズ』は、『雨にぬれた舗道』(69)と『三人の女』(77)と並び、イングマール・ベルイマンの『仮面/ペルソナ』(66)の影響を受けた“三部作”と評されることが多い(しかしまったく似ていない)。そしてキャスリンというヒロインは、『雨にぬれた舗道』で青年を監禁したフランセスの延長にあるといえる。


 『雨にぬれた舗道』の青年は、少なくともヒロインの目の前では“男性”であるだけでなく、性別が未分化な“子供”を思わせる存在でもあった。青年のために娼婦を連れてくるヒロインには、女性として自分を捉える葛藤に留まらず、青年=子供の成長を見守るような“疑似母親”の倒錯すら感じられた。口をきかない青年が軽快に踊る姿は、ヒロインの瞳=カメラが捉えるサイレント映画のコメディシーンのようだった。この奇妙なシーンは少年が女性の映像に手をかざす『仮面/ペルソナ』の冒頭シーン、沈黙のイメージとその精神性において接近している。



『イメージズ』© 2023 Phoenix Films Holdings Limited


 夫、死んだはずの恋人、元恋人。“三人の女”ならぬ“三人の男”。男性性は剥奪される。『イメージズ』に登場する男性たちはことごとくキャスリンの苦しみに無理解のように見える。ほとんど何の助けにもなっていない。そして本作にも“子供”のイメージが応用されている。元恋人マルセルが連れてくるスザンナ(キャスリン・ハリソン)という少女。キャスリンは昔の自分によく似た少女と行動を共にする。複数のドッペルゲンガーたち。キャスリンとスザンナの関係のように、本作ではキャストのファーストネームと役名がシャッフルされている。演じる方もパズルなのだ。もはやこの作品のどこに“本物”がいるのか分からなくなる。


 これは、役者の解釈や即興を重んじるロバート・アルトマンらしいアプローチといえるだろう。まさに生き物のように動き続ける映画。少女役のキャスリン・ハリソンは、本作の後、ルイ・マル監督の傑作『ブラック・ムーン』(75)でユニコーンに出会う少女リリーを演じている。なんという運命!




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