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『イメージズ』永遠にひび割れた映画

© 2023 Phoenix Films Holdings Limited

『イメージズ』永遠にひび割れた映画

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完成しないパズル



「やめて!死んだ人が!」


 死んだ恋人の幽霊に向かって「黙れ!」と叫ぶキャスリン。キャスリンは彼がゴーストであり、イマジナリー・フレンドであることを自覚している。しかし仮に「消えろ!」と叫んでも彼が消え去ることはないだろう。キャスリンは自分で想像したイメージをコントロールすることができない。生命を獲得したイメージたちは凶悪な自動人形のごとく暴走を止めることがない。まばたきする間に姿を変えるイメージたち。


 『イメージズ』は、まばたきとまばたきの間で景色が一変してしまう瞬間を捉えている。すべての元凶がシャッターの開閉の間にあるかのように。喜びから殺意へと目まぐるしく変化するキャスリンのエモーションは、この動きと呼応している。キャスリンがカメラという元凶を破壊するのは理に適った行動といえる。



『イメージズ』© 2023 Phoenix Films Holdings Limited


 手袋を嵌めハンドルを握るキャスリンの美しさ。車のルームミラーに映るキャスリンの口元。ネオンの灯りに照らされたキャスリンの不穏な笑いは、ひびの入ったガラスがこわれる直前の状態にある。ランダムに襲い掛かってくるイメージに呼応する、エモーションの亀裂。本作はこの亀裂の溝にフォーカスを当てている。それはパズルのピースとピースの間にある溝とよく似ている。永遠にひび割れた映画。ロバート・アルトマンはこの亀裂を愛する。たとえイメージ=ユニコーンのパズルが完成しても、キャスリンの人生のパズルが完成することはないのだ。


*1 Mitchell Zuckoff「Robert Altman: The Oral Biography」

*2 「Vilmos Zsigmond: An Interview (Interview)」



文:宮代大嗣(maplecat-eve)

映画批評。「レオス・カラックス 映画を彷徨うひと」、ユリイカ「ウェス・アンダーソン特集」、リアルサウンド、装苑、otocoto、松本俊夫特集パンフレット等に論評を寄稿。




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『イメージズ』

「ロバート・アルトマン傑作選」

5月26日(金)より角川シネマ有楽町ほか、全国順次ロードショー

配給:マーメイドフィルム/コピアポア・フィルム

© 2023 Phoenix Films Holdings Limited

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