あの人もこの人も! 魅力的なキャスティング
『ミーン・ガール』を語る上で、キャスティングの素晴らしさは外せない要素だろう。主人公:ケイディを演じるのはリンジー・ローハン。前年に撮影された主演作『フォーチュン・クッキー』(03)(監督は本作と同じマーク・ウォーターズ)の全米興行収入は1億ドルを超え、一躍全米を代表するティーン・アイドルになっていた。
監督のウォーターズがローハンに出演を打診したところ、最初にローハンが興味を持ったのは、学校の女王レジーナ役。しかし、ローハンがレジーナになった場合、それに立ち向かうことができる女優を監督が思い付かなかったこと、パラマウント社の社長が『フォーチュン〜』で成功したローハンに悪役を演じさせるのは興行的に上手くいかないと判断したこと、またローハン自身も、意地悪な女の子を演じて観客に嫌われてしまうのは嫌だと思い始め、最終的には主人公のケイディを演じることとなった。
学校で最も権力を持つ女子グループ「プラスティックス」のリーダーで、学校に君臨する女王レジーナを演じるのはレイチェル・マクアダムス(「レジーナ」はラテン語、イタリア語、ルーマニア語で「女王」を意味している)。同年に公開された『きみに読む物語』(04)の令嬢役とは対照的に、世界は自分のためにあると信じるソシオパス高校生を嬉々として演じている。当初マクアダムスは、主人公ケイディ役でオーディションに参加していたが、ウォーターズはマクアダムスが高校生を演じるには少し歳をとり過ぎていると感じていた。ローハンがレジーナからケイディに役を変更することもあり、マクアダムスをレジーナに当てはめてみたところ、キャラクター的に早熟で大人っぽく見えるのは理にかなうと、最終的にこのキャスティングに至った。ちなみに、監督はレジーナの役作りにあたり、『摩天楼を夢見て』(92)のアレック・ボールドウィンを参考にさせたという。
『ミーン・ガールズ』(c)Photofest / Getty Images
底抜けにおバカだがどこか憎めない性格のカレン役は、今作が映画初出演のアマンダ・サイフリッド。彼女がその後に演じた役たちと比較すると、今作のおバカキャラは少し異色に思われるかもしれない。彼女は元々レジーナ役の候補で、カレン役の最有力候補はブレイク・ライブリーだった。しかし、プロデューサーのマイケルズの提案により、サイフリッドがカレン役でキャスティングされることになる。ささやくような独特な声が特徴のカレンだが、これは『お熱いのがお好き』(59)のマリリン・モンローを参考に、サイフリッドと監督が作り上げたキャラクターだ。
グレッチェン役のキャスティングは難航したそうで、まだ新人だったアシュレイ・ティスデイルやメアリー・エリザベス・ウィンステッドも候補として上がっていた。最終的に役を射止めたのは、ドラマ「サンフランシスコの空の下」の次女役やアニメ『ワイルドソーンベリーズ ムービー』(02)で主人公の声を担当するなど、俳優/声優とマルチに活動していたレイシー・シャベール。その時のオーディションのお題は、グレッチェンが「ジュリアス・シーザー」の感想文を読みながら感情を爆発させてしまうシーン。彼女の圧倒的な演技で起用が決まった。
こうして同級生を演じた4人だが、実際の年齢はバラバラ。撮影時、ローハンとサイフリッドが17歳、シャベールが21歳、マクアダムスに至ってはなんと25歳で、ローハンよりも母親役のエイミー・ポーラーの方が年齢が近かった。