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『ハスラー2』ポール・ニューマンvsトム・クルーズ、スコセッシが手掛ける“究極のスター映画”

(c)Photofest / Getty Images

『ハスラー2』ポール・ニューマンvsトム・クルーズ、スコセッシが手掛ける“究極のスター映画”

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ロビー・ロバートソンと作り上げたロック世代のハスラー像



 今回は「スター映画」の監督に徹したスコセッシゆえ、いつもの作品ほど彼のアクの強さは出ていない。かつて見た時はそこに物足りなさも感じたが、再見してみると、やはり、スコセッシ節がいたるところに発揮されている。特にプールバーで流れる音楽に彼の個性がにじむ。


 「ハスラー」はモノクロで、クールなジャズ(音楽ケニヨン・ホプキンス)が使われていたが、カラー作品となった今回の音楽を担当したのは、『ラスト・ワルツ』(78)以降公私に渡ってスコセッシの親友だったザ・バンドのロビー・ロバートソン。彼が手がけたインストルメンタル曲のアレンジは、大御所ギル・エヴァンスが担当。ロビーの曲以外にも、多くのロック・ミュージシャンの曲がテンコモリ。ロック世代のハスラー像になることで、ダークな印象の前作より軽快さも感じられる。


 まずはタイトルバック。タバコの煙が映し出され、「運も才能のうち」というナレーションが入り、赤い文字のタイトルバック。そこにロビーのクールな音楽が流れ、なんともゾクゾクさせられる。勝負師の世界の非情さとスリルをイメージで伝える始まりだ。また、ちょっと危険な雰囲気のバーが出てきて、ヴィンセントがカルメンにホテルに戻るように促す場面では、エリック・クラプトンがロビーと共作し、クラプトンが歌った軽快なテンポの「イッツ・イン・ザ・ウェイ・ユー・ユーズ・イット」が流れる。ボーカル以上にクラプトンのシャープなギターの音が強調されることでバーの場面にパンチが生まれる。スコセッシは初期の『ミーン・ストリート』(73)や後の『グッドフェローズ』(90)でもクラプトンのサウンドを使っていたが、『ハスラー2』に関してはロビーに相談して、この新曲を作ってもらったという(その結果、この曲はヒットとなった)。



『ハスラー2』(c)Photofest / Getty Images


 ヴィンセントがエディにもらった特別なスティックを使い、うなり声をあげながら、プールバーで能力を見せつける場面で流れるユーモラスな曲は、アメリカの個性的なシンガー・ソングライターだったウォーレン・ジヴォンの「ロンドンのオオカミ男」。別のバーの場面ではフィル・コリンズのヒット曲「ワン・モア・ナイト」が流れるが、「スコセッシ・オン・スコセッシ」のインタビューによると、スコセッシはこの曲を聞いて、玉突きの場面に関する多くのアイデアを得たのだという。


 また、これぞ、スコセッシ節と思えるのが、(まだ若い)フォレスト・ウィテカーの登場場面。無能なプレイヤーのふりをしているが、実はキレ者のハスラーだったことが判明し、エディは彼との試合で完敗し、ひどく落ち込む。そこで流れるのは、ブルース界の重鎮マディ・ウォータースの「スティル・ア・フール」。マディの重いリズムがどんと胸に響き、音からは悪魔のプレイヤーの術中にはまり崖っぷちにいる主人公の心理が伝わる。


 スコセッシ映画にはブルース系の音楽が登場することが多く、今回の映画には大ベテランのブルースマン、ウィリー・ディクスンが特別に参加。また、B・B・キング、ボー・ディドリーといった重鎮たちの曲も随所にはさみこまれる。他にもロバート・パーマー、ドン・ヘンリー、マーク・ノップラーなど、実力あるミュージシャンの曲が収録された豪華なサントラとなっている。そうしたサウンドによって街角にあるプールバーのザラついた雰囲気が伝わり、都市の猥雑な風景にこだわってきたスコセッシらしい選曲だ(ロッカーのイギ―・ポップも“通りがかりのプレイヤー役”でワンシーンのみ出演)。


 「音楽が長年の間、私に与えた影響は計り知れないものがある」と前述の「スコセッシ・オン・スコセッシ」の中で語っているスコセッシだが、この映画も音楽に関してはこだわりがいっぱい。40年間、彼の音楽面の“知恵袋”だったロビーは23年8月に80歳で他界したが、サントラが充実した『ハスラー2』を見直すと、監督がこのミュージシャンとすごした豊かな時間が蘇ってくる。



取材・文:大森さわこ

映画ジャーナリスト。著書に「ロスト・シネマ」(河出書房新社)他、訳書に「ウディ」(D・エヴァニアー著、キネマ旬報社)他。雑誌は「ミュージック・マガジン」、「キネマ旬報」等に寄稿。ウエブ連載をもとにした取材本、「ミニシアター再訪」も刊行予定。




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