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『オペレーション・フォーチュン』強烈な作家性から次のステージへ。ガイ・リッチーの生存戦略

© 2023 MIRAMAX DISTRIBUTION SERVICES, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. ALL MOTION PICTURE ARTWORK © 2023 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

『オペレーション・フォーチュン』強烈な作家性から次のステージへ。ガイ・リッチーの生存戦略

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ガイ・リッチーの生存戦略



 注目すべきは、監督が意識的に、俳優の演技の方向性やアンサンブルの妙、脚本の意外性などのアプローチによって、従来の典型的な娯楽大作に収まるのを忌避しているという部分である。一般的な考えでいけば、スパイ映画ならスパイ映画らしい要素が詰め込まれた内容を、できるだけ高い質で提供できれば成功だといえるだろうし、もちろんそれだけで賞賛に値することは間違いない。しかしリッチー監督はすでにその領域で成功を果たしていて、少なくとも作家的な意味では、あえて同じような達成を繰り返す必要がないと考えているのかもしれない。


 本作を観れば分かるように、現在のリッチー監督は、『スナッチ』(00)のような若さの勢いに任せた演出を次第に手放していって、コテコテの“ガイ・リッチーらしさ”は、冒頭の特徴的な編集に片鱗が残っているくらい。つまり自分自身の作家性がもたらす予定調和からも離れようとしているのではないのか。



『オペレーション・フォーチュン』© 2023 MIRAMAX DISTRIBUTION SERVICES, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. ALL MOTION PICTURE ARTWORK © 2023 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.


 それは一見、商業的な成功や業界での影響力の維持などに興味がなくなっているようにも感じられるが、この考え方も少し違うかもしれない。本作のように、通常の娯楽作がたどろうとする方向を微妙にずらし、自分の持ち味すら捨てていっているというのは、希少性を高めたり新鮮さをとり入れることで存在意義を強めるといった、一種の生存戦略でもあるのではないか。そう考えれば、自らの特権性を利用することで、こういった一部変則的な作品を仕上げるのは、ある意味合理的な選択でもあるのだと考えられる。


 すでにベテランの域に達し、映画作家としても過渡期に突入しているガイ・リッチー監督。その作品には、いまだからこそ存在する、ある意味で玉虫色といえる微妙な面白さや魅力がある。であれば観客は、そこに面白さを見出すよう意識的にチャンネルを合わせていくことで、現在の彼の作品をより楽しめるのではないだろうか。


 だが、本作にはあまりにもガイ・リッチーらしさを濃厚に感じる部分がある。それは彼が映画づくりを志すきっかけになったという、『明日に向って撃て!』(69)がフィーチャーされているところだ。劇中のカーチェイスの場面で登場する古いムスタング同様、いまでも根底の部分で漂っているクラシカルな志向というのは、このオマージュシーンを抜きにしても、どうしても脱せないものなのだ。



文:小野寺系

映画仙人を目指し、さすらいながらWEBメディアや雑誌などで執筆する映画評論家。いろいろな角度から、映画の“深い”内容を分かりやすく伝えていきます。

Twitter:@kmovie



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作品情報を見る



『オペレーション・フォーチュン』

10月13日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

配給:キノフィルムズ

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