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『オペレーション・フォーチュン』強烈な作家性から次のステージへ。ガイ・リッチーの生存戦略

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『オペレーション・フォーチュン』強烈な作家性から次のステージへ。ガイ・リッチーの生存戦略

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ジェイソン・ステイサムの正しい使い方



 とはいえ、やはりガイ・リッチー監督との結びつきが最も強いのは、今回で5度目のタッグとなるジェイソン・ステイサムだといえるだろう。リッチー監督の初期作『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』がデビュー作となり、『スナッチ』(00)、『リボルバー』(05)などでキャリアを積んできたステイサムは、まさに監督と一緒に成功を掴んできた存在なのだ。


 リッチー監督が使い方をよく理解しているように、ここでのステイサムはキャストのなかであえてアクセントにはならず、彼のパブリックイメージに近い、沈んだ色の岩石のような無骨な雰囲気を発散させている。トム・クルーズが『ミッション:インポッシブル』シリーズでいつでもキラキラしながら必死に走り回っているのとは対照的に、ステイサムはミッションにあまり積極的ではない。基本的に不機嫌な姿勢で作戦に参加することで、さまざまな展開に巻き込まれるステイサムから自然にユーモアが生まれることになるのだ。



『オペレーション・フォーチュン』© 2023 MIRAMAX DISTRIBUTION SERVICES, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. ALL MOTION PICTURE ARTWORK © 2023 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.


 逆に、強烈な個性を発揮しているのがオーブリー・プラザだ。ハッカーとしても潜入スパイとしても極めて有能ながら、ミッションの最中に絶えず冗談を言いまくり、下ネタも厭わず毒舌を吐きまくる役柄は鮮烈。彼女の存在が作品にコメディの要素を多く持ち込み、キャラクターが全体のバランスをすら大きく変化させている。


 そして印象的な役柄をもう一人選ぶなら、やはりヒュー・グラントが演じる武器商人グレッグだろう。彼は基本的に恐るべき悪人でありながら、ある面では善良だったり純情な部分があるなど、憎めない性質を数多く纏っている。そして最も興味深いのは、彼の動きが世界の行方に影響を与え、フォーチュンらに追い風を与えるだけでなく、彼ら以上の役割まで果たしてしまうところだ。


 この意外な展開もまた、予定調和になりがちな娯楽作品の枠組みに変化を与えようとする、リッチー監督の実験的な試みだといえよう。そしてヒュー・グラントが出演していた監督の過去作『ジェントルメン』(20)同様に、善悪の二元論では割り切れない世界の複雑さを皮肉な顛末で描いている。この点については、ガイ・リッチーもシニカルなイギリスのクリエイターの一人だと感じるところだ。





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