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『ゼイリブ』カルト SF映画の傑作が今もリスペクトされ、引用される理由とは?

(c)1988 StudioCanal. All Rights Reserved.

『ゼイリブ』カルト SF映画の傑作が今もリスペクトされ、引用される理由とは?

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伝説のプロレス喧嘩シーン



 カーペンターの「バランスの欠如」を象徴するのが、中盤のプロレス喧嘩シーンだ。


 主人公ネイダを演じたのはWWFのプロレスラー、ロディ・パイパー。プロレス好きだったカーペンターは脚本執筆後に演技経験の少ない彼を主演に起用することを提案。困惑する周囲をよそに、パイパーの承諾をまんまと取り付けた。そんな彼のために用意されたのが、中盤のプロレス喧嘩シーンだった。パイパー演じる主人公ネイダは仕事の同僚フランク(キース・デイヴィッド)にエイリアンが見えるサングラスをかけさせようとするが、彼は拒否。「サングラスをかけてエイリアンを見ろ!」「イヤだ!」の押し問答が喧嘩に発展。バックドロップやスープレックスが炸裂する5分以上におよぶ、異様にしつこく粘っこい格闘が繰り広げられた。明らかにストーリーには関係ないこのシーンをカーペンターは低予算映画の貴重な撮影日、2日間を使って撮りあげた(しかも1か月半におよぶリハーサルまで行った)。



『ゼイリブ』(c)1988 StudioCanal. All Rights Reserved.


 さらに、この映画で最も有名なセリフにも「バランスの欠如」を見ることができる。ネイダは銀行でエイリアンたちを射殺する前にこう告げる。


 「ここに来たのは風船ガムをかんで大暴れするためだ。でも風船ガムはなくなっちまった。」


 これは、主演のパイパーがプロレス用のインタビューを収録するためにメモしたものだったが、カーペンターが気に入って採用したという。しかしスタッフはこのセリフを全く理解できなかった。なぜこんなセリフを?と問われにカーペンターはこう返したという。


 「意味はわからないが、イカしてるじゃないか」


 レーガンとプロレス・・・、あまりに80年代的な、ある種の野暮ったさが横溢するこの作品には、天才ジョン・カーペンターの怒りと茶目っ気がバランスを失いながら、なぜか見事に融合している。それが同作に唯一無二のインパクトと読後感を与え、アーティストたちにリスペクトされ続ける理由なのだろう。



『ゼイリブ』(c)1988 StudioCanal. All Rights Reserved.


 そして、『ゼイリブ』に限らず、カーペンター作品は多くのクリエイターたちを惹きつける魅力にあふれている。その理由も明らかだ。『ゼイリブ』製作と同じ頃、カーペンターはメジャースタジオから『 トップガン』(86)と『 危険な情事』(87)の監督を立て続けにオファーされたが、これを断っている。


 「映画監督として自分というものがわかったんだよ。一時期、僕は有名なハリウッド・スタジオの監督になって大儲けしたいと思っていたんだ。今はそんなこと思わない。全く馬鹿らしい。私は権威というものが嫌いなんだから」


 この精神こそ、カーペンターの映画に特別な魅力をまとわせる。クリエイターたちは決して権威におもねらない彼のインディーズ魂に敬意を払い続けるのだ。


参考文献

映画秘宝ディレクターズ・ファイル ジョン・カーペンター 恐怖の倫理」(鷲巣義明・監修/洋泉社)

映画作家が自身を語る 恐怖の詩学 ジョン・カーペンター」(ジル・ブーランジェ・編/井上正昭・訳/フィルムアート社)

https://www.wired.com/2017/01/they-live-theory-debunked/



文:稲垣哲也

TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー マンガに革命を起こした男』(WOWOW)『たけし誕生 オイラの師匠と浅草』(NHK)など。現在、ある著名マンガ家のドキュメンタリーを企画中。


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『ゼイリブ』製作30周年を記念して、<製作30周年記念HDリマスター版>の公開が決定!


『ゼイリブ<製作30周年記念HDリマスター版>』は2018年9月29日(土)~新宿シネマカリテ(レイトショー)他にて公開。


※2018年6月記事掲載時の情報です。



『ゼイリブ』

発売元:TCエンタテインメント/是空

販売元:TCエンタテインメント

Blu-ray、DVD各3,800円+税 好評発売中

(c)1988 StudioCanal. All Rights Reserved.

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