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『アメリ』悪夢的センスの監督が、人々を幸せにする挑戦に成功。今も愛され続ける映画

Ⓒ2001 UGC IMAGES-TAPIOCA FILM-FRANCE 3 CINEMA-MMC INDEPENDENT-Tous droits reserves

『アメリ』悪夢的センスの監督が、人々を幸せにする挑戦に成功。今も愛され続ける映画

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22年後にアメリはKGBのスパイだと判明?



 アメリ自身が映画の画面に一瞬映り込んだ何かに魅了されるように、映画の中には溢れるほどに、奇妙で不思議だが、どこか愛らしいアイテムが盛り込まれる。ブタが傘をさしたデザインの電気スタンド、エリザベスカラーを着けた犬の肖像画、歯磨き粉と同じチューブの足用クリーム、アーティチョークの中に隠したキャビアの瓶詰、犬の姿をした足拭きマット、金魚鉢から逃げ出そうとした金魚(これはジュネの知人の実際のエピソードらしい)など、本筋を忘れるほど細部への愛が心をくすぐる。おしゃれな方向でマニアックなセンスを刺激してくる点も、『アメリ』の成功の要因となった。


 色調に関しては、撮影後にジュネは全シーンをデジタル加工している。赤、緑、青というカラーが、登場人物の感情を表すように使われているが、この色彩はブラジルの画家、フアレス・マチャドにインスパイアされたとジュネは語っている。


『La Veritable histoire d'Amélie Poulain(アメリ・プーランの真実)』


 そして2023年、ジャン=ピエール・ジュネ監督は『La véritable histoire d'Amélie Poulain(アメリ・プーランの真実)』という7分の短編を作り、アメリの正体はKGBのスパイだと明かした。なぜウェイトレスがパリで最も家賃の高いモンマルトルの小ぎれいなアパートに住んでいたのか。なぜ隣人を監視していたのか。豆袋の中で何を探っていたのか。鏡の光でシグナルを送る行為や、ノームに隠された秘密、さらに『アメリ』に何度も出てくるダイアナ妃の事故との関係まで、『アメリ』のシーンとニュース映像などを重ねて解説していく。もちろんジュネ監督の遊び心から生まれた作品ではあるが、製作から20年以上も経ってからこのような短編が生まれるのは、『アメリ』を監督が、そして世界の映画ファンが愛し続けたことの証であろう。



取材・文:斉藤博昭

1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。クリティックス・チョイス・アワードに投票する同協会(CCA)会員。



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『アメリ デジタルリマスター版』

11月17日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、ユーロスペースほか全国公開!

提供:ニューセレクト 配給:アルバトロス・フィルム 

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