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『ナポレオン』キューブリック主義者リドリー・スコットによる非英雄譚

『ナポレオン』キューブリック主義者リドリー・スコットによる非英雄譚

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ナポレオン主義者かつキューブリック主義者



 1937年11月30日生まれ、今年86歳を迎えた巨匠リドリー・スコット。年齢で考えればとっくの昔に引退モードのはずなのだが、その精力的な仕事ぶりは衰えることを知らず、まるで回遊魚のように動き続けている。


 彼は『最後の決闘裁判』の撮影を終えたその日に、ネクスト・プロジェクトとしてナポレオンの映画化を発表。並行して『グラディエーター』(00)の続編にも着手し(現時点ですでに90分のフッテージを編集済みだという)、来年には別のプロジェクトもスタートする予定。とてつもない超人ぶりだが、その人並外れた行動力が、キューブリックも諦めざるを得なかったナポレオンを映画化に導いたのだろう。


 実はリドリー・スコットとスタンリー・キューブリックは、遠からぬ縁がある。彼の監督第2作『エイリアン』(79)は、『2001年宇宙の旅』から大きな影響を受けているのだ。リドリー・スコットは、この画期的なSF叙事詩で、コンピュータが乗組員よりも重要な位置を占めていることに衝撃を受けた。このアイデアを膨らますことで、アッシュ(イアン・ホルム)というアンドロイドの創造に繋がったのである。二人は実際に話をしたこともあったという。


 「私はスタンリーと2回話をしたことがある。最初は『エイリアン』を撮り終えたばかりの時で、オフィスから“スタンリー・キューブリックから電話です”と言われたんだ。“おやおや”と思ったね。彼は、“あなたの映画を見たばかりだ。質問がある。あの胸から突き出てくるものは、どうやって作ったんだい?”と尋ねてきたんだ」(*3)




 リドリー・スコットは、偉大なフィルムメーカーとしてキューブリックを尊敬していた。生前彼が果たせなかったナポレオンの映画化を、自分が果たしたことには特別な感慨もあったことだろう。彼は一貫して「私の映画はスタンリーとは関係ない」と明言しているが、『ナポレオン』プロデューサーのケヴィン・ウォルシュは、キューブリックの意思を彼が引き継いだという考えを表明し、「数年前、リドリーに“まだ実現できていない映画は?と聞いた時、彼はナポレオンと答えたのです」(*4)とも語っている。


 この証言が正しいのだとすれば、『最後の決闘裁判』撮影時よりも前から、リドリー・スコットはナポレオンの映画化を夢想していたことになる。『デュエリスト/決闘者』でハーヴェイ・カイテル扮するフェロー中尉が熱烈なナポレオン主義者であったように、リドリー・スコットもまたナポレオン主義者であり、キューブリック主義者だったのだ。





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