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『ハウス・オブ・グッチ』リドリー・スコット監督 映画化のタイミング、俳優・スタッフへの絶大な信頼を語る巨匠 【Director’s Interview Vol.174】
2022年1月現在、84歳のリドリー・スコットだが、その創作意欲とエネルギーは衰え知らず。『最後の決闘裁判』から半年を待たずに、新作『ハウス・オブ・グッチ』が公開される。このところ“実録モノ”が多いリドリーだが、今回は、世界的ファッションブランド、GUCCIの内幕に迫る。ブランドの創業者の孫であるマウリツィオ・グッチが巻き込まれる衝撃の事件に至るまでが、克明に映画化された。
背景となる1970〜90年代の再現や、スケール感あふれるイタリアでのロケによって、“ビジュアリスト”と呼ばれるリドリー・スコットらしい作品が完成。レディー・ガガが演じるパトリツィアを中心にしたグッチ一族のドラマに、どのように向き合ったのか。電話の向こうにいる巨匠(zoomだが、電話で参加というのが彼らしい!?)は、相変わらず意気軒昂な受け答えであった。
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パンデミック下で2本の大作を完成
Q:あなたとファッションブランドの関係といえば、30年以上前のシャネルのCMが思い出されます。
リドリー:懐かしいね。私はCMディレクターとしてそれなりの成功を収め、シャネルでは4つのキャンペーン(1979〜1990年の中で4回)を担当した。あのCMは香水の広告のスタイルを大きく変えたと、今でも自負している。じつは私は大学を卒業する頃、ファッション・フォトグラファーを志望しており、そう考えると今回の『ハウス・オブ・グッチ』とのつながりは多く見つかるね。
Q:ただ、この企画はこうして映画化にこぎつけるまで、長い時間を要しました。
リドリー:そうなんだ。プロデューサーのジャンニーナは今から20年前にこの企画を私に持ちかけてきた。言うまでもなく彼女は私の妻だ(笑)。その時点で多くの文献があり、私も興味を抱いたので、何回か脚本にとりかかるチャンスはあった。私以外に監督を任せることもできたが、なかなか企画は動かなかった。
『ハウス・オブ・グッチ』ⓒ 2021 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. ALL RIGHTS RESERVED.
Q:そこまで放置された企画が突然動き出したわけですね。
リドリー:今から3年前、脚本家のロベルト・ベンティヴェーニャに出会い、彼がミラノ出身で、母親がファッション業界の人であることがわかった。これは最適な人材だと思い、彼に脚本を任せることにしたんだ。6ヶ月くらい待てば完成すると思っていたら、なんとロベルトは6週間で書き上げてきた。驚いたね(笑)。それで私も勢いにのって、すぐに映画化に取り掛かったわけだ。
Q:『最後の決闘裁判』からそれほど時間を空けずに、本作の撮影に入ったわけですが、世界は新型コロナによるパンデミックの最中でした。
リドリー:約20ヶ月の間に2本の映画を完成させたわけで、我ながらよくやった(笑)。『最後の決闘裁判』でもすでにコロナの影響を受けていたが、今回はイタリアでコロナ対策のチームが、すばらしい仕事をしてくれた。正直言って、マスクを着用してワクチンを打つという行動は私の常識を超えていた。でも映画の現場では従う必要がある。今回は現場の人間すべてがワクチンを打ち、毎日検査をしたおかげで、ウイルスの影響を受けることはなかった。じつに効果的だったと実感する。撮影期間は43日で、これは私の作品でも異例のスピードだったね。