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『ハウス・オブ・グッチ』リドリー・スコット監督 映画化のタイミング、俳優・スタッフへの絶大な信頼を語る巨匠 【Director’s Interview Vol.174】
今回のこだわりは、ニードル・ドロップ
Q:ビジュアリストと形容されるあなたらしく、時代の再現も含めて美術や衣装が見どころになっています。
リドリー:それは美術や衣装のスタッフの功績だ。われわれは各時代の流行をきっちり研究し、それらを作品に合わせてデザイン化していった。
Q:音楽でも時代が表現されていましたが、選曲も誰かに任せたのですか?
リドリー:いや、私のチョイスだ。私を誰だと思ってる? 映画監督だよ(笑)。この作品では早い段階から、音楽でシーンを盛り上げることを意識した。いわゆる“ニードル・ドロップ”(※)が必要だと確信したんだ。舞台がイタリアなので、何曲ものオペラに針を落とした。よく考えれば、この物語自体もオペラのような外連味を備えているからね。特に私が気に入っているのは、パトリツィアとマウリツィオのラブシーンから結婚式への流れで、ヴェルディの「乾杯の歌」からジョージ・マイケルの「Faith」を繋げてみた。映像にぴったりだっただろう? クライマックスで使った、パヴァロッティとトレイシー・チャップマンのデュエット「Baby Can I Hold You」にも満足している。登場人物たちのさまざまな“後悔”を壮大に表現できたと思う。
※映画の音楽に既存曲を使用すること。レコードに針を落とすことからそう呼ばれたが、現在はあまり使われない表現。
『ハウス・オブ・グッチ』ⓒ 2021 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. ALL RIGHTS RESERVED.
Q:そうした曲と映像の組み合わせなど、あなたはつねに編集の部分にこだわる監督でもあります。
リドリー:私の作品にはトリッキーなものも多いので、すぐれた編集者が必要になる。ここ数作は、クレア・シンプソンに任せているが、彼女との最初の仕事は『誰かに見られてる』(87)だから、もう35年の付き合いになるのか……。クレアはその日に撮った映像をすぐに仮でつないでくれるので、私は毎晩、自分が何を撮ったかを確認することができた。監督というものは、できるだけ自分が撮ったものをカットしたくないのだが、彼女と仕事をするとその考えが時代遅れだと気づかせてくれるんだ。
Q:『最後の決闘裁判』は中世のフランスを舞台にしながら、現代の観客に訴えるテーマを備えていました。今回の『ハウス・オブ・グッチ』はどうですか?
リドリー:製作当初から、これは一族の崩壊と再構築において、それぞれの登場人物が独自の役割を果たす、シェイクスピア的なドラマになると確信していた。シェイクスピアが時代を超えてアピールするように、誰もが本能を刺激される物語ではないかな。
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監督・製作:リドリー・スコット
『テルマ&ルイーズ』(91) 、『グラディエーター』(00)、『ブラックホーク・ダウン』(01)など でアカデミー賞®の最優秀監督賞やDGAアワードにノミネートされる著名な監督である。最近ではマイケル・ファスベンダー、キャサリン・ウォーターストン主演『エイリアン:コヴェナント』(17)や、マーク・ウォールバーグ、ミシェル・ウィリアムズ、クリストファー・プラマー主演『ゲティ家の身代金』(17)の監督を務めた。スコットは輝かしいキャリアの中で数々の賞を受賞してきており、4つのDGAノミネートの他、『グラディエーター』(00)などの作品で3度アカデミー賞®の最優秀監督賞にノミネートされている。1977年、スコットは『デュエリスト/決闘者』(77)で長編映画の監督デビューをし、同作品でカンヌ国際映画祭の受賞も果たす。1979年にはSFスリラー『エイリアン』(79)を公開。フランチャイズ作品として成功を収めた。1982年にはハリソン・フォード主演『ブレードランナー』(82)の監督を務め、1993年に同作品はアメリカ国立フィルム登録簿に追加された。他の監督作品としては、トム・クルーズ主演『レジェンド/光と闇の伝説』(85)、マイケル・ダグラス、アンディ・ガルシア主演『ブラック・レイン』(89) 、アンソニー・ホプキンス、ジュリアン・ムーア主演『ハンニバル』(01)、オーランド・ブルーム、ジェレミー・アイアンズ主演『キングダム・オブ・ヘブン』(05)、『ロビン・フッド』(10)、高評価を得たヒット作で、マイケル・ファスベンダー、ノオミ・ラパス、シャーリーズ・セロン主演『プロメテウス』(12)、コーマック・マッカーシー脚本、マイケル・ファスベンダー、キャメロン・ディアス、ハビエル・バルデム主演の『悪の法則』(13)、クリスチャン・ベイル、ジョエル・エドガートン主演『エクソダス:神と王』(14)、マット・デイモンとジェシカ・チャステイン主演『オデッセイ』(15)等がある。最近作はマット・デイモン主演の『最後の決闘裁判』(21)。スコットは1967年に、亡くなった弟と共にRSAという映画製作会社を設立。革新的なコマーシャルを作ることで世界的に有名なブランドからも高評価を得ている。1995年にはスコット・フリー・プロダクションズを設立。ロサンゼルスとロンドンにオフィスを持ち、『イン・ハー・シューズ』(05)、アカデミー賞®ノミネート作品の『ジェシー・ジェームズの暗殺』(07)、『ブレードランナー2049』(17)、アガサ・クリスティーの名作を原作とした『オリエント急行殺人事件』(17)などを手掛けた。2003年にはイギリス映画産業への貢献を認められ、ナイトの称号を授与された。2016年には30回目のアメリカン・シネマテーク・アワードを受賞。2017年には全米監督組合より生涯功労賞を2018年には英国アカデミー賞フェローシップ賞を受賞した。
取材・文: 斉藤博昭
1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。
『ハウス・オブ・グッチ』
1月14日(金)全国公開
配給:東宝東和
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