2021.03.15
『デュエリスト/決闘者』あらすじ
ナポレオン軍に属し荒々しい決闘を続ける士官2人。その決闘の始まりは些細なことだったが、徐々に激しさを増していき、15年という年月をかけるほどの果てなき決闘へと発展していく――。
Index
- リドリー・スコットの魅力が詰まったデビュー作
- 品格を持つ者と反逆する者――個性が際立つ2大俳優
- 決闘、決闘、また決闘……美学が息づくスコット・ワールド
- 絵画のような映像美の世界、その陰にはあの巨匠の影響が
リドリー・スコットの魅力が詰まったデビュー作
リドリー・スコット監督の作品で、どれがいちばん好きかと問われたら、映画ファンならとまどうに違いない。SF映画史に残る『エイリアン』(79)や『ブレードランナー』(82)は文句なしの傑作。アカデミー賞に輝く『グラディエーター』(00)も忘れてはいけない史劇スペクタクルだ。日本を舞台にした『ブラック・レイン』(89)も捨てがたいし、21世紀以降も戦争劇『ブラックホーク・ダウン』(01)やリアルなSFドラマ『オデッセイ』(15)といった力作もある。
筆者も正直迷うところだが、スコットの作品の魅力が生々しいまでに宿っている点で、デビュー作『デュエリスト/決闘者』(77)を挙げたい。スコット作品の魅力とは、すなわち俳優の輝き、生々しいバイオレンス、そして圧倒的な映像美。今やスコットのトレードマークにもなっている、そんな要素が、どのようにして生まれたのか。本稿ではそれに迫ってみよう。
『デュエリスト/決闘者』予告
『デュエリスト/決闘者』は19世紀、ナポレオン統治時代のフランスを舞台にした歴史ドラマ。ジョゼフ・コンラッドの短編小説「決闘」を基にして、ふたりの騎兵隊員の因縁のドラマを作り出した。折しも同時期、フランシス・F・コッポラもコンラッドの小説に基づき、3,000万ドル以上の巨費を投じて『地獄の黙示録』(79)の撮影を進めていたが、『デュエリスト/決闘者』はわずか90万ドルで製作された。
ストーリーはシンプルだ。貴族の出である騎兵隊の士官デュベール中尉は、平民出身のフェロー中尉に謹慎を伝える命令を受ける。ところがフェローは彼を逆恨みして、決闘を申し込んできた。この一件以来、彼らは14年にわたり、実に6度の決闘を重ねることになる。剣、銃、馬上対決……再会しては戦い、重傷を負ってなお、彼らは因縁の敵に対峙し続けるのだ。