2021.03.15
決闘、決闘、また決闘……美学が息づくスコット・ワールド
スコットは妥協のないバイオレンス描写でも知られているが、それはこのデビュー作からしてはっきりと見ることができる。決闘の描写は、いずれも生々しい血や傷とは切り離せない。戦場の場面では死体が転がるさまを大胆に見せつける。後の『グラディエーター』『キングダム・オブ・ヘブン』(05)『 ロビン・フッド』(10)などの、戦争を題材にした歴史大作につながる要素がはっきりと見て取れる。
デュペールとフェローの6度の対決シーンは、いずれも異なったスタイルで撮られており、それぞれが異なった見せ場として機能する。例えば、4度目の決闘では馬に乗って走る両者が一瞬の剣の交わりによって雌雄を決する場面では、死を覚悟したデュペールの脳裏に過去がフラッシュバックし、映画自体もカットを目まぐるしく変える。フェローの皮膚が剥がれる場面も鮮烈な印象を残し、見る者を激しく混乱させる。
『デュエリスト/決闘者』TM and (C) 1997 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.TM & Copyright (C) 2012 by Paramount Pictures.All Rights Reserved.
一方で、2度目の対決場面は固定カメラでじっくりと描写。広大な野原でふたりが剣を構え、どのタイミングでそれを振るい出すのかをロングショットで緊張感とともにとらえている。ちなみに、このシーンは黒澤明の名作『椿三十郎』(62)のクライマックスからの影響を指摘する声もある。
何よりスコットらしいと思えるのは、廃墟で繰り広げられる3度目の対決の場面だ。長時間の剣の振りにより衣服はボロボロになり、皮膚には血がにじむ。剣の振りのスピードも、次第に落ちていく。ヨレヨレになりながらも、最後まで死力を尽くすふたり。屋内の闇に身を置いた、そんな彼らを狭間から差し込む日の光が照らしだす。光と闇を活かしたスコットの映像術が、このときにすでに確立していたことをうかがわせる名シーンだ。