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『ブラック・レイン』はいかにして“オオサカ・ノワール”となったのか?

(c)Photofest / Getty Images

『ブラック・レイン』はいかにして“オオサカ・ノワール”となったのか?

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『ブラック・レイン』あらすじ

ニューヨークで起きた惨殺事件の犯人・佐藤を逮捕したNY市警のニックとチャーリー。彼らは日本へ護送する途中で佐藤に逃げられてしまう。大阪府警の協力を得て捜査のため足を踏み入れた大阪で、ニックたちはミステリアスな暗黒街にうごめくヤクザの標的になってしまう…。


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リドリー・スコットが切り取った大阪



 1989年に公開された『ブラック・レイン』は、『危険な情事』(87)『告発の行方』(88)などの大ヒット作を生んだスタンリー・R・ジャッフェとシェリー・ランシングのプロデュースによるバディ・アクションだ。ニューヨークの刑事ニック・コンクリン(マイケル・ダグラス)が、偽札の原版を持つ日本のヤクザ・佐藤(松田優作)を追って大阪へと飛び、現地の刑事・松本(高倉健)と組んで死闘を繰り広げていく。


 タイトルは爆発の黒煙が混じって降り注ぐ「黒い雨」を意味し、空襲の隠喩だ。すなわちアメリカが自国の価値観を雨のように日本に降り注がせ、それが佐藤などのネオ・ヤクザを台頭させたという筋書きから、日米の文化的衝突を描き出している。


 そんな本作も、初公開からすでに30年以上の歳月を経てきた。とはいえ監督のリドリー・スコットは、今も業界の第一線で活躍するトップディレクターであり、ニックを演じたマイケル・ダグラスもマーベルのスーパーヒーロー映画に加勢するなど、ハリウッドの最前線に身を置いている(アンディ・ガルシアも健在だ)。


『ブラック・レイン』予告


 いっぽうで日本側のキャストは、松田優作だけでなく高倉健や神山繁、若山富三郎、そして内田裕也に安岡力也、島木譲二といった多くの主要キャストが故人となり、時代の経過を感じずにはおれない。しかしそういった印象を作品が抱かせないのは、彼らの全力を振り絞ったパフォーマンスと、独自のビジュアルセンスで大阪のランドスケープを切り取った監督の演出が今も色あせていないからだろう。


 本来ならば こうした俳優や監督の功績を顧みるべきだろうが、やや語り尽くされた感があるので、本稿では少し違う部分に目を向けてみたい。



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