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『ブラック・レイン』はいかにして“オオサカ・ノワール”となり得たのか?

(c)Photofest / Getty Images

『ブラック・レイン』はいかにして“オオサカ・ノワール”となり得たのか?

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代打で起用された撮影監督ヤン・デ・ボン



 このように、日本でのロケ撮影は6週間に満たないうちに切り上げられ、後はニューヨークやロサンゼルスなどを中心にアメリカで撮影。北海道で予定していたクライマックスの銃撃戦とバイクチェイスも、カリフォルニア州サンフランシスコのナパ・バレーに切り替えられて撮影された。


 なによりこうした製作の混乱はスタッフにも波及し、何人もの重要なポジションにある者が更迭された。特に大きかったのは撮影監督の交代で、同作はロケ開始当初『危険な情事』で流麗なカメラワークを披露したハワード・アザートンが担当していた。しかし慣れないフレーミングからミスを繰り返し、クランクインからほどなくして首が飛んだ。


 というのも『ブラック・レイン』にはスーパー35mmという、フィルム両端のサウンドトラック部分も撮像スペースに充て、そこからスタンダードやワイドスクリーンなどのアスペクト比を切り出すフィルムフォーマットが用いられている。パラマウントはビデオなどの二次使用を念頭に、トム・クルーズ主演の戦闘機アクション『トップガン』(86)を機にこの規格を推進し『ブラック・レイン』に用いたが、アザートンはこれに対応しきれなかったのだ。



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 代わりに『ダイ・ハード』(88)のヤン・デ・ボンが撮影監督として後任。彼は同作からも分かるとおり、アクションと連動した緻密なライティングプランを示すことができる逸材で、照明の設置に時間がとれないタイトなスケジュールや、スーパー35mmでの撮影にも臨機応変に対応。屋内シーンでは感度の高いコダック5295フィルムを用いて光源不足をカバーしたり、またクラブのセットや市場の撮影などには、フレーム内に光源の写り込む室内照明や街灯でライティング効果を出したりと、限られた条件を最大限に活かしている。


 こうした効率のいい撮影アプローチが後に監督作『スピード』(94)で活かされ、6,000万ドルは下らないといわれた同作の製作費を3,000万ドルに収めている。



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