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『ダイ・ハード』アクション映画を高度な次元へと押し上げた功績を探る!
『ダイ・ハード』あらすじ
クリスマス・イブの夜、LAのハイテクビルを最新兵器で武装した謎のテロリスト集団が襲った! 彼らの要求を拒んだ重役達は即座に射殺。なすすべも無く怯える人質たち。ビルの中にいた非番警官ジョン・マクレーンは外部との連絡が一切遮断された中、ただ一人命をかけた闘いを挑んだ!
Index
定石を変えた等身大のヒーロー像と、精密を極めた脚本
クリスマス・イブを迎えたロサンゼルス。慰労パーティで賑わう日系企業ナカトミ社の高層オフィスビルに、武装テロの一味が侵入、社長を射殺し、社員たち全員を人質にとる。解放の条件は世界に散らばる同志の釈放。だが連中にとって真の目的は、金庫に眠る6億4,000万ドルの債券だった。
しかしそんな状況下で、たった一人だけ難を逃れた男がいた。妻に会うためにビルを訪れたNY刑事ジョン・マクレーン(ブルース・ウィリス)。世界でもっとも不運な場に居合わせた男は、悪手を打ちまくるロス市警やFBIに足をとられながらも 孤立無援でテロリストとの戦いを繰り広げていく――。
1988年に製作された『ダイ・ハード』は、アクション映画の次元を高い位置へと押し上げた作品のひとつだ。高級時計のムーヴ(動力機械)のように精密を極めた脚本は、物語から偶発的な要素やご都合主義的な展開を排除。登場人物による動機や行動が組み合わさって状況を編み、やがては「密室サスペンス」という歯車が「高層ビルの爆発」という巨大な歯車に波及していき、映画は壮絶なスペクタクルへと観客を誘導する。
『ダイ・ハード』(C)2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
また1988年当時は、シルベスター・スタローンやアーノルド・シュワルツェネッガーに代表される、死を恐れぬマシンのような「肉体派ヒーロー」を主流とした時代。同作はこのジャンルに、苦境に悪態をつきながらも立ち向かう「等身大の男」ともいうべきヒーロー像を導入。ブルース・ウィリス演じるその等身大の男=ジョン・マクレーンは、ハリウッドにおける同ジャンルのキャラクター像を再定義させ、アクション映画の主流を一気に変えていったのである。
また、そんなマクレーンを引き立てるテロの親玉、ハンス・グルーバーの人物造型も、秀逸と断じて相違ない。悠然とアルマーニを着こなし、おごれる日本人に天誅を下すと宣言する狡猾な活動家は、マクレーンとの対峙において次第に醜悪な本性を露わにしていく。こうしたキャラクターのトーンの変化を、当時41歳だった英国の俊英アラン・リックマンが優れたパフォーマンスで表現している。聞けばブルース・ウィリスよりも先にキャスティングが決まったというのだから、その未知なる存在感に賭けた製作側の思惑は見事に成功したといえるだろう。