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『ブラック・レイン』はいかにして“オオサカ・ノワール”となり得たのか?

(c)Photofest / Getty Images

『ブラック・レイン』はいかにして“オオサカ・ノワール”となり得たのか?

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混乱した素材をまとめ上げたオスカー受賞編集者



 そしてもうひとりの功労者は、編集を担当したトム・ロルフだ。上映時間3時間13分に及ぶ米宇宙開発映画『ライトスタッフ』(83)で米アカデミー賞最優秀編集賞を受賞。膨大な素材からの編集という修羅場をくぐり抜けてきたベテラン編集マンである。


 『ブラック・レイン』は前述したように、日本でのロケの許可が下りず、現場が混乱を来すことも度々だった。そのため予定の変更が多く、撮影をしながら脚本に手を入れるといった措置がとられ、編集素材はおのずと膨大になっていったのだ。


 ロルフは約100時間にも及ぶ膨大な撮影素材から、3時間17分のワークプリント(粗編集)を作成。作品はそこからさらに2時間40分へと整えられていった。この段階でプロデューサーを含めて上映時間の検討がなされ、映画はさらに1時間50分に縮められていく。そのためニックが単独大阪に残って佐藤を追う際、その協力をするはずだったジョイス(ケイト・キャプショー)の出番が大幅に減った(劇中、彼女が出てくる必然性がまったく感じれらないのは、この編集の影響によるものだ)。



TM & Copyright (C) 1989 by Paramount Pictures Corporation. All Rights Reserved. TM,(R) & Copyright (C) 2013 by Paramount Pictures.All Rights Reserved.


 しかしこの段階で、もうひとりの製作者であるシェリー・ランシングが、本編における大阪の撮影場面の少なさに言及。編集は日本ロケの素材をより活かす方向でシーンを増やし、上映時間を2時間5分へと拡大していったのである。


 実際の撮影は思うようにいかなかった『ブラック・レイン』だが、こうした優秀なスタッフの働きやプロデューサーの判断が奏功し、本作は“オオサカ・ノワール”として圧倒的な存在感を放っているのである。


 ちなみに警官隊が京橋のパチンコ店に踏み込み、ヤクザを一斉検挙するシーンが中盤にあるが、あの事務所内はロサンゼルスのミリオンダラー・シアターで撮られたもので、そこは『ブレードランナー』(82)の撮影にも用いられている。


 困難を極めた制作体制に反し、リドリー・スコットは自作の中でも『ブラック・レイン』を気に入っており、それは雇われ仕事として演出に徹したことで、自分のヴィジョンを作品に反映できたからだと彼自身が述懐している。



参考文献

 David Jon Wiener.Sep.1989“American Cinematographer Magazine”Hollywood:ASC.

 Laurence Raw and Lord Puttnam CBE“The Ridley Scott Encyclopedia”Scarecrow Press

「松田優作 炎 静かに」山口 猛 著(光文社)

ファースト・カット アメリカン・シネマの編集者たち」ゲイブリエラ・オールドハム編著/奥村賢 西澤誠一 監修 (フィルムアート社) 



文: 尾崎一男(おざき・かずお)

映画評論家&ライター。主な執筆先は紙媒体に「フィギュア王」「チャンピオンRED」「映画秘宝」「熱風」、Webメディアに「映画.com」「ザ・シネマ」などがある。加えて劇場用パンフレットや映画ムック本、DVD&Blu-rayソフトのブックレットにも解説・論考を数多く寄稿。また“ドリー・尾崎”の名義でシネマ芸人ユニット[映画ガチンコ兄弟]を組み、TVやトークイベントにも出没。

Twitter: @dolly_ozaki



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『ブラック・レイン』

Blu-ray:1,886円+税

発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

※2019年12月の情報です。

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