2021.03.15
絵画のような映像美の世界、その陰にはあの巨匠の影響が
映像美に話を移そう。本作を撮るうえでスコットが参考にしたのは、スタンリー・キューブリックの監督作品『バリー・リンドン』(75)。シーンのひとつひとつが絵画のような構図でとらえられていることに共鳴し、スコットはこれに倣おうとした。炎やロウソクの火のみを頼りにして撮った屋内の場面もあり、それが上手くいった場面もあれば、そうでなかった場面もあるという。ともかく、スコットはあらゆる場面のストーリーボードを制作し、理想のビジュアルを追求した。
現在でこそ巨費を投じてセットを建設できる立場にあるスコットだが、駆け出しの当時はあたえられた製作費も少なく、セットを建造する余裕はなかった。結果、本作はすべてがロケによって撮られている。メインのロケはフランスの田舎町サルラで行なわれ、スコットは滞在していたホテルさえも撮影地として利用した。
『デュエリスト/決闘者』TM and (C) 1997 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.TM & Copyright (C) 2012 by Paramount Pictures.All Rights Reserved.
サルラの町には思いがけない幸運も待っていた。脚本を読んだ町長が「これは、この町で起きたことだ」と訴えたという。町の歴史を調べて見ると、二人の男が長年に渡り、決闘を繰り広げたという史実が記録されていた。原作者コンラッドは、この町の歴史から著作のヒントを得ていたのだ。この偶然の一致は、スコットを大いに勇気づけることになった。
『デュエリスト/決闘者』はカンヌ国際映画祭に正式出品され、新人監督賞を受賞。興行的には成功したとは言い難いが、スコットの名を世界的に知らしめるには十分だった。これを足がかりにして、スコットは次の『エイリアン』を撮ることになるのだから。
日本では『エイリアン』が公開された後、『ブレードランナー』の公開前に陽の目を見ることになったが、このタイミングも絶妙と言えば絶妙。ジャンルは違えども、1980年代初頭の映画ファンはスコットの幻惑的な映像マジックを立て続けに目撃することになったのだから。
文:相馬学
情報誌編集を経てフリーライターに。『SCREEN』『DVD&動画配信でーた』『シネマスクエア』等の雑誌や、劇場用パンフレット、映画サイト「シネマトゥデイ」などで記事やレビューを執筆。スターチャンネル「GO!シアター」に出演中。趣味でクラブイベントを主宰。
『デュエリスト/決闘者』
スペシャル・コレクターズ・エディション
DVD: 1,429 円+税
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
※2021年3月の情報です。
TM and (C) 1997 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.TM & Copyright (C) 2012 by Paramount Pictures.All Rights Reserved.
(c)Photofest / Getty Images