2021.03.15
品格を持つ者と反逆する者――個性が際立つ2大俳優
育ちが良く軍規を守るデュベールと、血の気が多く粗野なフェロー。この対照的なキャラクターの配役にあたり、スコットはふたりの売り出し中の俳優を口説き落とす。前者には『ボウイ&キーチ』(74)『ナッシュビル』(75)などのロバート・アルトマンの監督作品で注目されたキース・キャラダイン。後者には『ミーン・ストリート』(73)『タクシー・ドライバー』(76)などのマーティン・スコセッシ作品で頭角を現わしたハーヴェイ・カイテル。
キャラダインは『ナッシュビル』の劇中曲によりアカデミー主題歌賞を受賞したばかりで、当時の注目度は高かった。乗馬や剣術の素養もあり、デュべール役には、まさにうってつけ。また、デュべールは物語の過程で家庭を築き、子どもをもうけるが、キャラダインは子役との接し方も上手で、撮影現場以外でも彼らとコンタクトを取っていた。ちなみに、デュべールの幼い息子たちを演じたのは、リドリー・スコットの息子ジェイクとルークだ。
『デュエリスト/決闘者』TM and (C) 1997 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.TM & Copyright (C) 2012 by Paramount Pictures.All Rights Reserved.
一方のカイテルは、出演の説得に少々時間がかかった。「ニューヨーカーの俺に、昔の騎馬隊の役だって?」というのが、オファー時の彼の反応。しかし、カイテルの反逆児的な個性がフェロー役に何より必要と考えたスコットは、熱心に説得によって出演の承諾を得る。カイテルは乗馬も剣の心得もなかったが、撮影までの集中的な訓練により、カイテルはフェロー役を自分のものにしていった。
他の出演者もスコットの希望がかなった。彼らの上官役にアルバート・フィニーや、エドワード・フォックスといった、英国で王立劇場の舞台に立つほどの名優たちが出演。『戦場のメリークリスマス』(83)のトム・コンティや、『ユージュアル・サスペクツ』(95)のピート・ポスルスウェイトら、後にブレイクする新進俳優たちもチョイ役ではあるが顔を見せている。また、デュべールの妻にふんしたクリスティナ・レインズは当時のキャラダインの恋人。殺伐とした物語に和みをあたえる、彼らの息の合った共演は見どころのひとつでもある。