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『ターミナル』内から外への越境、刻印された難民というテーマ

(c)Photofest / Getty Images

『ターミナル』内から外への越境、刻印された難民というテーマ

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『ターミナル』あらすじ

東欧の小国クラコウジアからニューヨークを訪れようと、JFK空港に降り立ったヴィクター。だが、出国手続きの際に母国でクーデターが発生したためにパスポートが無効になってしまう。帰国することも、アメリカに入国することもできなくなった彼は、仕方なく空港内で生活をすることに。1ヶ月目 仕事をみつけ、2ヶ月目 友人を作り、3ヶ月目 恋に落ち、そして9ヶ月目 彼がニューヨークに来た理由が明かされる……。


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様々な才能とのコラボレーション



 音楽:ジョン・ウィリアムズ、撮影:ヤヌス・カミンスキー、編集:マイケル・カーン。スティーヴン・スピルバーグは超早撮りで知られるが、その理由のひとつに、主要スタッフを気心の知れた熟練者で占めていることが挙げられる。阿吽の呼吸で仕事ができる鉄壁の布陣を敷くことで、彼は次々に傑作を撮ってきた。


 その一方で、スピルバーグは脚本家を固定しない映画作家でもある。もちろん、『ジュラシック・パーク』(93)、『宇宙戦争』(05)、『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(08)のデヴィッド・コープや、『ミュンヘン』(2005)、『リンカーン』(2012)、『ウエスト・サイド・ストーリー』(2020)、『フェイブルマンズ』(2022)のトニー・クシュナーなど、お気に入りのシナリオライターたちはいる。だが作品のカラーによってスピルバーグは最もふさわしい書き手をフックアップし、様々な才能とコラボレーションしてきた。


 例えば、ハチャメチャな戦争コメディ映画『1941』(79)。シナリオを務めているのは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズで知られるロバート・ゼメキス&ボブ・ゲイルのコンビ。スピルバーグはゼメキスの初監督作品『抱きしめたい』(78)をプロデュースしており、早くから彼らの才能を認めていた。



『ターミナル』(c)Photofest / Getty Images


 『ミュンヘン』(05)に起用されているのは、そのロバート・ゼメキス監督の『フォレスト・ガンプ/一期一会』(94)のシナリオを手がけ、第67回アカデミー賞脚色賞に輝いたエリック・ロス。『太陽の帝国』(87)は、イギリスを代表する戯曲家であり、『恋におちたシェイクスピア』(98)などの脚本でも知られるトム・ストッパード。『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』(11)には、『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!』(07)や『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』(10)など、当時エッジーなコメディ映画で旋風を巻き起こしていたエドガー・ライトが参加している。


 そして、『ターミナル』(04)でジェフ・ナサンソンと共同で脚本を手掛けているのは、サーシャ・ガヴァシ。彼はもともと、サンデー・タイムズやオブザーバーに記事を寄稿するジャーナリストだった。やがて彼は、『シザーズ・カップ』(99)という小さな作品で脚本家デビュー。その2本目となる作品が、いきなりトム・ハンクス主演、スティーヴン・スピルバーグ監督のビッグ・プロジェクト。それは彼にとって青天の霹靂だった。




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