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『グロリア』映画自体がひとつのジャンル。あの黒澤明も絶賛を惜しまず

(c)Photofest / Getty Images

『グロリア』映画自体がひとつのジャンル。あの黒澤明も絶賛を惜しまず

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映画初出演の子役は、この1本で引退



 そんなカサヴェテスの演出以上に、『グロリア』でインパクトを残すのは、やはり主演ジーナ・ローランズであり、いま改めて観ても、そのカリスマ的な存在感は色褪せていない。裏稼業との関係性を“匂わす”表情の数々に、容赦ない銃撃の手さばき。何より、最初は預かったフィルに手を焼き、疎ましくも感じていたグロリアが、母性愛にめざめていくプロセスに、ローランズの真骨頂が発揮されている。料理などしないグロリアがフィルのために目玉焼きを作るが、まったくうまくできず、フライパンごとゴミ箱に捨てるシーンなど、ローランズの名演がキャラクターを息づかせる。実際のローランズは、カサヴェテスとの間に3人の子供に恵まれ、長男のニック・カサヴェテスは父に続いて映画監督となり、『ジョンQ』(02)などを撮った。次女のゾエ・カサヴェテスも『ブロークン・イングリッシュ』(07)など監督・脚本家として活躍している。


 そしてローランズとほぼ同じくらいの出番を任されたのが、本作が初の映画となったジョン・アダムスで、350人ものオーディションを経て当時7歳で大抜擢。クライマックスなど演技初体験とは思えない表情を見せているものの、アダムスは1980年度のゴールデン・ラズベリー賞の最低助演男優賞に選ばれてしまう。冷静に考えれば、ひどい仕打ちであるが、同賞を同点で受賞したのが、歴史に残る名優のローレンス・オリビエ(『ジャズ・シンガー』により選出)だったことはアダメスにとって名誉かもしれない。アダメスは『グロリア』のみで俳優業を辞め、NYソーホーのビリヤード場でマネージャーとしての職を得たという。



『グロリア』(c)Photofest / Getty Images


 『グロリア』はコロンビアというメジャー・スタジオの製作だが、基本的にカサヴェテスは自分たちで製作費を捻出するインディペンデントの映画作りを続けた。そのため妻のジーナ・ローランズが主演として協力したケースが多くなる。『グロリア』も当初は、別の俳優(バーブラ・ストライサンドと言われている)に主人公役が打診されたが断られ、ローランズが喜んで引き受けたという。このあたりの関係は、日本では独立プロで映画製作を続けた新藤兼人監督と乙羽信子によく似ている。


 『グロリア』を自作としてそこまで気に入っていないとされるジョン・カサヴェテスだが、1980年代後半に『グロリア』の続編の脚本を執筆していた。ジーナ・ローランズの主演も想定されつつ、その事実は1989年の彼の死後に発覚した。1999年には名匠シドニー・ルメットがメガホンをとり、シャロン・ストーン主演で『グロリア』がリメイクされたものの、残念ながら評価は低く、興行的にも振るわなかった。リメイクの失敗によって、オリジナルは唯一無二の輝きをいつまでも放ち続けるのである。


参考文献:「大系 黒澤明」第3巻 編・解説/浜野保樹 講談社



文:斉藤博昭

1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。クリティックス・チョイス・アワードに投票する同協会(CCA)会員。



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