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『ブリグズビー・ベア』冒頭15分に驚きがいっぱい!? スピルバーグを魅了したコメディ界の異才が送る、着ぐるみクマさんの奇妙な大冒険

『ブリグズビー・ベア』冒頭15分に驚きがいっぱい!? スピルバーグを魅了したコメディ界の異才が送る、着ぐるみクマさんの奇妙な大冒険

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映画の内容とリンクする、「映画、撮ろうぜ!」スピリット



 本作の見どころと言えば、前述した冒頭15分間。そして劇中劇とも言える子供向け番組「ブリグズビー・ベア」のノスタルジックな作り込み。そしてもう一つ挙げるとなると、それは中盤から突入する「映画、撮ろうぜ!」的な独特の高揚感にある。


 映画ファンの中にはこういった「映画の中で映画を撮る」というくだりが大好物という人も多いはず。世の中には『 僕らのミライへ逆回転』(2008)から『 桐島、部活やめるってよ』(2012)に至るまで、様々な「映画、撮ろうぜ!」な展開を秘めた作品が存在する。これらの多くが光り輝いて見えるのは、実際の作り手の純粋な映画愛と主人公のそれとが重なり、さらには観る側の映画愛とも呼応して、そこに大きな相乗効果が巻き起こるからなのだろう。


 本作の主人公も興味深い心情の偏移をたどる。あの子供向け番組の「続き」が観たい。けれど続きはもはや存在しない。だったら自分の手で作っちゃおう! DIY精神を発揮した彼らは、自らの手で子供番組「ブリグズビー・ベア」の新作を撮影し、ネットにアップロードすることで、大きなセンセーションを巻き起こしていく・・・。




 もうお気づきだろう。この映画のフィクションには多分に事実が埋め込まれている。仲間同士で駆けずり回って真剣に動画撮影を続けるスタイルは、まさしく“Good Neighbor”が歩んできた道程そのもの。本作は外見こそファンシーな作りだが、決して絵空事というわけではなく、きちんと地に足が付いている。実際にこうやって成功へのきっかけを掴んできた彼らだからこそ、ここに描かれるキャラクターや物語の顛末は「実際に起こり得る奇跡」としてある種のリアリティを持って浮かび上がってくるのだ。


 さらに今回の映画制作において、カイル・ムーニーやデイヴ・マッカリーたちは業界の先輩にあたる有名コメディ・トリオ「 ザ・ロンリー・アイランド」の助けを借り(彼らもまた、ネットを使ってトップへの階段を駆け上がり、一足先に映画製作にも乗り出してきた先駆者たちだ)、さらに複数の制作会社を紹介してもらいながら、本作のストーリーさながらに、「映画を作る」という夢を具現化するための最良の仲間たちを増やしていった。


 その上、『 LEGOムービー』(2014)を大ヒットさせたフィル・ロードとクリス・ミラーといったクリエイターたちもこの企画をたいそう面白がり、プロデューサーとして参加することを決意。制作の過程で様々な実践的なアドバイスを与えてくれたという。フィル&クリスといえば、降板したとはいえ、当初は『 ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』を監督することが決まっていた二人だ。もしも『ブリグズビー・ベア』の中に少なからず『スター・ウォーズ』の息吹を感じることがあれば、それはマーク・ハミルのみならず、彼らによっても多分に吹き込まれたものなのかもしれない。




 もちろん、映画は作り手の一方的な思いだけで成立するものではなく、受け手(観客)にしっかりと作品を届けることによって初めてゴールを迎えるもの。本作はその瞬間までもしっかりと物語に織り込んでいるのはさすがだ。それは冒頭、たったひとりぼっちで「ブリグズビー・ベア」を観ていたジェームスが、この尊いクマのキャラクターをついに観客みんなと一緒に「共有して抱きしめる」瞬間でもある。


 と同時に、ムーニー、マッカリー、コステロといった中学生トリオが長年温めてきたこの映画もまた、この瞬間、ついに観客のもとへと手渡されたことになる。


 突拍子もない物語のように見えながらも、実は作り手たちの実体験やリアルな感情に基づいて紡がれている本作。その熱き情熱が伝わるからこそ、サンダンスでもあれほど大きな賞賛に包まれたのだろう。その驚きと感動は、巡り巡ってようやくこの日本へ。新進気鋭のコメディアンたちが奏でる奇想天外ながらどこか手のひらにじっくりと温もりの残る本作を、ぜひ多くの方々に味わってもらいたいものだ。



文:牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンⅡ』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。



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ブリグズビー・ベア

6月23日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほか公開

公式サイト: www.brigsbybear.jp

© 2017 Sony Pictures Classics. All Rights Reserved.


※2018年6月記事掲載時の情報です。

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