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『ニア・ダーク/月夜の出来事』B級というなかれ!剛腕監督キャスリン・ビグローの原点

(c)Photofest / Getty Images

『ニア・ダーク/月夜の出来事』B級というなかれ!剛腕監督キャスリン・ビグローの原点

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斬新なヴァンパイアムービーの背後に、あの人気監督の影が



 『ニア・ダーク/月夜の出来事』を独創的な物語にするために、俳優たちやスタッフとのコラボレーションは欠かせなかったとビグローは語る。主人公ケイレブを演じたエイドリアン・パスダーは、『トップガン』(86)のチッパー役でデビューしたばかりの当時売り出し中の俳優。彼の繊細な個性はケイレブ役に説得力をあたえた。メイを演じたジェニー・ライトや、子どもの姿のまま永遠の生を得てしまった吸血鬼ファミリーの一員を演じる子役ジョシュア・ミラーの不気味な存在感も光る。


 吸血鬼ファミリーを演じた俳優は他に、ジェシー役のランス・ヘンリクセン、そのパートナーでグループの母親的な存在を演じたジェニット・ゴールドスタイン、粗暴な吸血鬼セヴェリン役のビル・パクストン。このキャスティングを見てビンとくる映画ファンも多いだろう。というのも、この3人は前年のジェームズ・キャメロン監督作『エイリアン2』(86)で共演を果たしている。ビグローは彼らをキャスティングするうえでキャメロンに連絡をとり、一応許可を求めたとのこと。快諾したキャメロンはこの後彼女と親しくなり、1989年に結婚するが、2年後には離婚した……という余談も。



『ニア・ダーク/月夜の出来事』(c)Photofest / Getty Images


 キャメロン作品が本作にあたえた影響は他にもある。撮影監督のアダム・グリーンバーグは『ターミネーター』(84)で注目された名手。同作の夜のシーンの映像に感銘を受けたビグローは、夜の場面の多い本作にぜひ起用したいと考え、カメラマンに抜擢する。効果は絶大で、ネオンや街灯を生かした絵作りは官能的な輝きを放ち、吸血鬼映画というジャンルに独特の美をあたえた。「美しくぼかされて、セザンヌの絵画のよう」と、彼女はグリーンバーグの手腕を絶賛する。


 美しい映像に、ときに叙情的に、ときに荒々しい音楽を付けたのはドイツの電子音楽グループ、タンジェリン・ドリーム。ウィリアム・フリードキン監督の『恐怖の報酬』(77)で映画音楽の分野に進出して以降、彼らはトム・クルーズ主演の『卒業白書』(83)をはじめ、多くのハリウッド作品にスコアを提供していた。「彼らの音楽には。挑発的で忘れられない快活な響きが一貫して浸透している」とビグローは語る。





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