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『ハートブルー』キャスリン・ビグローの美学が成立させたアクション映画としてのバランス

(c)Photofest / Getty Images

『ハートブルー』キャスリン・ビグローの美学が成立させたアクション映画としてのバランス

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『ハートブルー』あらすじ

カリフォルニア、ベニス・ビーチで起こった連続銀行強盗殺人事件。FBI捜査官のジョニー・ユタは、犯人がサーファーであると推測し、潜入捜査に乗り出す。サーファーの生活にも慣れたある日、ふとしたきっかけから犯人らしき人物を見つけるが、それはジョニーのよく知る人物だった…。


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若きキアヌ・リーブス×キャスリン・ビグロー



 日本が好景気に沸く1989年に設立された「ラルゴ・エンタテインメント」……『プレデター』(87)や『ダイ・ハード』(88)で、当時から飛ぶ鳥を落とす勢いだったプロデューサー、ローレンス・ゴードンと日本ビクターが共同設立した映画製作会社だ。興行面で不振が続き、残念ながら業界からの撤退を余儀なくされてしまったが、それでもこの会社が存在したことには大きな意味があった。なぜなら、スパイク・リー監督の『マルコムX』(92)と、『ハートブルー』(91)という、映画史的に重要な作品を、この世に誕生させたからである。


 とくにハードなアクション映画が求められ、爆発シーンなどエクストリームな表現がエスカレートしていくことになる90年代当時、ラルゴ・エンタテインメントの第1作として、鳴り物入りで送り出されることとなった『ハートブルー』は、そんな時代の要請に応えるアクション満載の一作となった。期待したほどには興行成績は伸びなかったが、本作は90年代を彩るアクション大作のなかで異なる輝きを放ったことで、観客の心に残っているのだ。根強い人気を受けて、リメイク作『X-ミッション』(15)も製作されている。



『ハートブルー』(c)Photofest / Getty Images


 本作では、『ダーティ・ダンシング』(87)や『ゴースト/ニューヨークの幻』(90)で人気の絶頂にあったパトリック・スウェイジにくわえ、本作公開の3年後には『スピード』(94)で世界的スターへと登りつめることとなる、キアヌ・リーブスがダブル主演に選ばれた。いくつもの主演作がありながら、一般的にはそれほど認知度は高くなかったキアヌが、この期待作の主演に据えられたのは大抜擢といえる。


 熱意をもってキアヌを推したのは、キャスリン・ビグロー。後に『ハート・ロッカー』(08)で、アカデミー賞初の女性による監督賞受賞に輝く、本作の監督である。彼女もまた、これまでにない機会に恵まれたことで、並々ならぬ情熱を本作にぶつけることとなった。製作当時は、本作の製作総指揮も務めているジェームズ・キャメロンと婚姻関係にあったが、本作の公開年に別れることとなり、短い結婚生活の終わりを迎えている。




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