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『オッペンハイマー』心を忘れた科学、悲しいマラソン

© Universal Pictures. All Rights Reserved.

『オッペンハイマー』心を忘れた科学、悲しいマラソン

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『オッペンハイマー』と『JFK』



 このようにジャンルの観点から本作を捉えた場合、前述したオッペンハイマーとストローズの対立関係に、多くの人が名作『アマデウス』(84)を連想するかもしれない。天才作曲家モーツァルト(トム・ハルス)の才能に、宮廷作曲家のサリエリ(F・マーリー・エイブラハム)が翻弄されていく、舞台劇を映画に置換させた歴史ミステリーの古典は、なるほど『オッペンハイマー』の鋳型と思えなくもない。


 しかし誤解を恐れずに言うと、自分は近代史ミステリーとしての『オッペンハイマー』の骨格には、オリバー・ストーンが1991年に発表した『JFK』と似た形状を覚える。同作は地方検事ジム・ギャリソン(ケビン・コスナー)の説に基づく政治陰謀スリラーだ。ギャリソンは、ジョン・F・ケネディ暗殺をめぐるCIAの陰謀に関与した容疑で民間人クレイ・ショー(トミー・リー・ジョーンズ)を起訴し、法廷の場で大統領の死を追及していく。そしてダラスで狙撃されたケネディ大統領の悲劇は、彼の存在が邪魔な勢力の間接的な結託による、国家規模のクーデターだったと唱えるのだ。



『オッペンハイマー』© Universal Pictures. All Rights Reserved.


 この抹殺行為は自分の中で『オッペンハイマー』と符号が一致する。オッペンハイマーはアメリカの核兵器開発に邪魔な存在として、軍拡をめぐるステークホルダーが国家規模の共犯関係を結び、彼をつまはじきにしたのだと解釈できる。それはストローズを軸に、ソ連との軍拡競争を視野に置くトルーマン大統領(ゲイリー・オールドマン)の態度や、「水爆の父」と呼ばれたエドワード・テラー(ベニー・サフディ)がオッペンハイマーに不利な証言をするなどの科学的分断にも明らかで、それらは後述する、オッペンハイマーがラストに見る閃きへの布石として機能するのだ。


 『オッペンハイマー』と『JFK』――。両作を接続するブリッジにやや強度が足りない気もするが、前者のラスト、オッペンハイマーに対するストローズのやり方に異を唱え、彼の大臣就任を保留した人物としてジョン・F・ケネディの名が挙がるところは、『アマデウス』以上の密着性を感じさせる。





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