2020.09.18
※本記事は物語の核心に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。
Index
- スパイジャンルの牙城に迫るノーラン版『007』
- 正逆の運動が入り混じる奇観な映像(※注!ネタバレ含みます。)
- フルフレームIMAXがもたらす視覚的興奮
- 自作を反復するノーラン映画の“行く末” (※注!ネタバレ含みます。)
スパイジャンルの牙城に迫るノーラン版『007』
クリストファー・ノーラン監督の最新作『TENET テネット』は、彼が愛する『007』シリーズ(62〜)からの影響とオマージュを即連させるスパイアクションだ。
ジョン・デヴィッド・ワシントン(『ブラック・クランズマン』『さらば愛しきアウトロー』(18))演じる主人公のCIAエージェントが、巨大な敵の野望を阻止するミッションを与えられ、その素性や狙いを明らかにするため、世界をまたにかけたアクションが全編にわたり繰り広げられていく。
かつてスティーブン・スピルバーグが、自らも『007』を手がけたいと、版元のイオン・プロダクションに掛け合ったように、ノーランもまた同プロダクションにアクセスし、シリーズに関わろうとした過去がある。
どちらもそれを果たすことはできなかったが、代わりにスピルバーグは、ジェームズ・ボンドの向こうを張った“インディ・ジョーンズ”という映画史上屈指の冒険キャラクターを生み、ノーランはこの『TENET テネット』という、映画史上類を見ない異色作をモノにしたのだ。