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『アバウト・シュミット』アレクサンダー・ペインの強い郷土愛が生んだホロ苦人生コメディ

(c)Photofest / Getty Images

『アバウト・シュミット』アレクサンダー・ペインの強い郷土愛が生んだホロ苦人生コメディ

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ニコルソン現時点最後のオスカー候補作



 話を『アバウト・シュミット』に戻そう。66歳で試練の旅に出かけるシュミットにとって唯一の心の拠り所は、アフリカの子供たちのための里親プログラムを介して知り合ったタンザニアの少年ンドゥグとの交流だ。そこには、いつも辛辣かつアイロニックでありつつも、最後には人物を肯定することを忘れない、ペインならではの思いやりが込められていて心が和む。


 そのペインにとって、“シュミット役として念頭にあった唯一の俳優”だったのが、ジャック・ニコルソンだ。出演依頼の際、ペインはニコルソンに対してたった一言、『小さな男を演じて欲しい』と指示したという。小さな男、つまり、本当は何者でもない普通の男、という意味だ。そして、ニコルソンは見事に監督の期待に応え、うらぶれた初老の男の人生をファーストショットからその視線で表現して、数えて12回目のオスカー候補となった。



『アバウト・シュミット』(c)Photofest / Getty Images


 ニコルソンがオスカーレースに名を連ねたのは、(今のところ)それが最後となった。2010年から事実上の休業状態にあるニコルソンは、健康不安説も噂される。もちろん彼は、本作の後も『N.Y.式ハッピー・セラピー』(03)、ダイアン・キートンとの掛け合いが絶妙だった『恋愛適齢期』(03)、『ディパーテッド』(06)、『最高の人生の見つけ方』(07)、『幸せの始まりは』(10)と数本の映画に出演している。しかし『アバウト・シュミット』は、ハリウッドを代表する演技派ジャック・ニコルソンが本来の魅力を発揮したという意味で、もしかして最後の作品になるかもしれない。



文:清藤秀人(きよとう ひでと)

アパレル業界から映画ライターに転身。現在、映画com、MOVIE WALKER PRESS、Safariオンラインにレビューやコラムを執筆。また、Yahoo!ニュース個人にブログをアップ。劇場用パンフレットにもレビューを執筆。著書に『オードリーに学ぶおしゃれ練習帳』(近代映画社刊)、監修として『オードリー・ヘプバーンという生き方』『オードリー・ヘプバーン永遠の言葉120』(共に宝島社刊)。



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