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『スティング』映画自体が持つ“騙し”のテクニック

(c)Photofest / Getty Images

『スティング』映画自体が持つ“騙し”のテクニック

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コミカルなロバート・レッドフォード



 ロバート・レッドフォードが演じたのは、ストリートで稼ぐ詐欺師として生きているジョニー・フッカー。彼はイリノイ州の街ジョリエットで、仲間であり詐欺の師匠でもあるルーサー(ロバート・アール・ジョーンズ)らとともに、ある男の運んでいた大金を騙して奪うことに成功する。しかし、その金はアイルランド系のギャングのボス、ドイル・ロネガン(ロバート・ショウ)のものであったことが発覚。ルーサーは殺害され、フッカーも殺し屋から狙われ続けることになる。


 進退きわまったフッカーはシカゴに到着すると、ルーサーが生前頼るように言っていた凄腕詐欺師ヘンリー・ゴンドルフ(ポール・ニューマン)を訪ねる。しかし、彼もまたFBIに追われ、娼館に隠れながら日陰者として日々を生きる状況にあった。そんな、意欲を失った飲んだくれの姿はフッカーを失望させるが、ゴンドルフはかつての仲間であるルーサーが殺されたことを知ると、昔からの詐欺仲間たちを召集、フッカーらとともに、ロネガンに対して一世一代の「スティング(騙し)」を仕掛ける作戦を立てる。



『スティング』(c)Photofest / Getty Images


 この作戦、非常に大掛かりで手が込んでいる。ゴンドルフはシカゴで競馬のブックメーカー(ノミ屋)を営んでいる人物になりきり、馬券を売る賭博場に見せかけた部屋を用意し、詐欺師たちに客や従業員をそれぞれ演じさせる。その場所で、ロネガンに大金を賭けさせて奪おうというのである。そのために、ゴンドルフが装う人物の部下でありながら、内通者として確実に儲けられる情報をロネガンにリークする役をフッカーが演じ、必ず勝てるとゴンドルフに信じさせようとするのである。


 面白いのは、ロネガンから命を狙われているフッカー自身が、内通者としてロネガンに接近する役を担うという意外性だ。ロネガンはフッカーの顔を知らないので、確かにそれも可能ではあるのだが、ロネガンが雇った殺し屋から逃げ回りながら、それでいてロネガンに接近するというのは、なんとも大胆だといえる。


 このように、殺し屋から終始逃げ回ってばかりの役を演じている、コミカルなレッドフォードだが、そんな彼にジョージ・ロイ・ヒル監督は、アニメのキャラクター、ロード・ランナーをかたどったオブジェを贈ったとされている。アメリカの人気シリーズ『ルーニー・テューンズ』で走ってばかりのロード・ランナーと、本作のレッドフォードを重ねたのだ。




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