2024.07.29
サーキットにみなぎる破格のボルテージ
本作の見どころは無数にある。まずはなんといっても会場にみなぎる凄まじい熱気。レース開催日の朝、1日の始まりをハンス・ジマーの音楽が荘厳に奏で、日の出と共に会場付近には早くも人が集まり出す。やがて日は昇り、駐車場や観客席は着々と埋まり、会場を覆う興奮のボルテージは爆発的に高まり、その沸点というべきところで、エンジンの爆音へと切り変わっていくーー。レース場の鼓動や息遣いを表現するような、かくなる象徴的なシーンの創造は、まさにトニー・スコットの真骨頂。
いざ迫真のレースが始まると、会場を埋め尽くす大観衆の歓声、マシン同士の熱戦と激突が相まって興奮が止まらない。これぞ、後のCG時代とは根本的に異なる”実写主義”の良さ。タイヤの焦げた匂いや、レーサーたちの汗の匂いさえ漂ってきそうな、生々しい臨場感がここにはある。
『デイズ・オブ・サンダー』(c)Photofest / Getty Images
とはいえ、これをどう撮るか、いかにストーリーを織りなすかに関しては難題続きだったよう。当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだったドン&ブラッカイマー、ヒット作の連発で自信みなぎるトニー・スコット、そして怖いもの知らず&疑問を感じたらすぐ口にするトム・クルーズ、彼の要請で現場でも執筆を続けた脚本家ロバート・タウン、その誰もが意見を主張し合い、紛糾の絶えない現場だったと言われる。