2024.07.29
『デイズ・オブ・サンダー』あらすじ
レースカーのビルダーとして名声を誇るハリーに、チームオーナーが青年・コールを紹介する。コールは天才的なドライブ・テクニックを見せつけ、ドライバーとして迎え入れられる。ハリーの指導でコールはさらに腕を磨いていくが、あるレースでライバルのローディと共に激しくクラッシュし、危うく再起不能になりかけてしまう。以来、レースに対する恐怖心を抱くようになってしまったコールは、仲間の応援を受け、再びレースに挑戦する…。
80年代からハリウッドで活躍を続けるトム・クルーズのキャリアを紐解くと、ノリに乗った「陽」の時代もあれば、注いだ情熱と努力がどこか空回りしてしまっているような「陰」の時代もあったことが伺える。
特にヒット作を連発した後だと世間の目も妙に厳しくなり、針の目を突くように欠点があげつらえられ、さも駄作であるかのような烙印を押されてしまうもの。1990年に公開された大作映画『デイズ・オブ・サンダー』はまさにその筆頭、というか、トムの不人気作を論じる際にいつも矢面に立たされる作品だ。でも果たしてこれはそれほど出来の悪い映画なのだろうか。劇場公開時はまだ幼かった筆者だが、大人になって初めてこの映画に触れて「全然悪くないじゃないか!」と驚いた。もしも未見で「デイズ~は駄作」という固定観念に縛られている方がいれば、ぜひこの機会にご覧いただきたいものである。
Index
四輪走行のトップガン
いつも自身の出演作に誰よりものめり込み、全力で身を捧げるトム。中でも『デイズ・オブ・サンダー』は肝入りの企画だった。そのこだわりと意気込みはオープニング・クレジットで「主演」のみならず、珍しいことに「Story by」として名前が掲げられることからも伺える。
そもそも、トムはいかにしてカーレースの世界にのめり込んだのか。答えは簡単。すべては『ハスラー2』(86)で共演して、年齢差を超えて心から尊敬し、信頼しあえる仲になった名優ポール・ニューマンの誘いがきっかけだ。
いざ、マシンに乗り込んでサーキットを走り抜けるスピードと振動を体感したトムは、すっかりこの世界に魅了された。と同時に、これをどうにかして映画のストーリーにできないかと、脚本家と構想を練り始めることに。
『デイズ・オブ・サンダー』予告
やがて、ようやく方向性が見え始めた頃、『トップガン』(86)で組んだプロデューサー、ドン・シンプソンとジェリー・ブラッカイマーに打診して、本格的なプロジェクトがスタート。もともとドン&ジェリーは「いつか『トップガン』の続編を!」というラブコールをずっとトムに送り続けており、さながら「四輪走行のトップガン」的なこの企画は、彼らにとってもまさに願ったり叶ったりだった。
当然ながらそこに『トップガン』のトニー・スコット監督までもが再合流し、各々の過去作と比べても圧倒的な巨額を誇る予算(6,000万ドル)が組まれた。参考までにいうと、『トップガン』の制作費は1,500万ドル、『ビバリーヒルズ・コップ2』(87)で2,700万ドルほど。その後の『クリムゾン・タイド』(95)で5,300万ドル。ブラッカイマー製作の作品でいうと『ザ・ロック』(96/7,500万ドル)の登場まで『デイズ~』の製作費は超えるものはなかった。