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『デイズ・オブ・サンダー』原案:トム・クルーズ、轟音とボルテージに満ちたカーレース超大作

(c)Photofest / Getty Images

『デイズ・オブ・サンダー』原案:トム・クルーズ、轟音とボルテージに満ちたカーレース超大作

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デュバルの関係性から浮かび上がるもの



 と、ここでもう一つ意識せずにいられないのが、トムにカーレースの魅力を授けてくれたポール・ニューマンの存在だ。ご存知の方も多いだろうが、ニューマンには78年に亡くなった役者志望の息子がいた。息子がどれだけ自分の力で道を切り開こうとしても、そこには常に父の名前の影響力があった。父と子の関係性はなかなかうまくいかず、唐突に訪れた息子の死は、ニューマンの心に生涯ずっと影を落とし続けたと言われている。


 父を亡くした息子と、息子をなくした父。『ハスラー2』で出会ったトムとニューマンは、互いに同じような喪失を抱えた二人だった。トム関連本の中には当時の二人の交友について「まるで父子のような」という表現を用いているものさえある。



『デイズ・オブ・サンダー』(c)Photofest / Getty Images


 そんなエピソードを踏まえて『デイズ・オブ・サンダー』を観ると、主人公とロバート・デュバルが築く擬似親子のような関係性が、どこかトムとニューマンの絆の投影のように思えなくもない。


 人生にはいくつもの通過儀礼があるが、トムにとって本作は、自らを奮い立たせて前進していくためには欠かせない、譲れない映画だったのだろう。さらなるスケール感を身に纏ってハリウッドで大活躍を続けるトムの輝かしい90年代は、こうして繊細さと豪快さを併せ持つ『デイズ・オブ・サンダー』と共に幕を開けたのだった。


参考文献

誰も書かなかったトム・クルーズ」ウェンズリー・クラークソン著、矢崎由紀子訳(1996/集英社)

「トム・クルーズ非公認伝記」アンドリュー・モートン著、小浜香訳(2008/青志社)



文:牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンII』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。



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