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『私生活』ブリジット・バルドーの肖像、異例の伝記映画

©1962 GAUMONT - STUDIO 37 – CCM

『私生活』ブリジット・バルドーの肖像、異例の伝記映画

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『私生活』あらすじ

スイスのレマン湖畔に建つ屋敷で育ったジルは、思い切ってパリへ上京。やがて女優として世界的スターになるも、ゴシップやバッシングに耐えられず故郷に戻る。かつて思いを寄せていた、演劇雑誌の編集長であり演出家のファビオと再会し、二人は結ばれる。ジルはつかの間の安らぎの日々を送るが、またもパパラッツィに悩まされる…。


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異例の伝記映画



 伝記映画の主人公を本人が演じる。『私生活』(62)は異例の伝記映画だ。ブリジット・バルドーによるブリジット・バルドーの肖像。スターダムを支えるシステムへの警鐘、ゴシップ誌によって作り上げられたイメージとの戦い。ルイ・マル監督は“バルドー現象”そのものを描いている。マスメディアによって作り上げられたイメージが制御不能になっていく。主人公のジル(ブリジット・バルドー)は“架空のジル”というイメージに圧倒され、生きるスペースを失っていく。パパラッツィに追われる彼女に“私生活”はない。


 本作はジャン=リュック・ゴダール監督とブリジット・バルドーによる『軽蔑』(63)の撮影風景を追ったドキュメンタリー『パパラッツィ』(63)のフィクション版といえる。かつて“世界で最も写真に撮られた女性”とも言われたブリジット・バルドー。物陰に隠れたパパラッツィは、スナイパーのようにカメラを構える。望遠レンズという名の“銃”がブリジット・バルドーを狙っている。



『私生活』©1962 GAUMONT - STUDIO 37 – CCM


 ブリジット・バルドーは『私生活』の脚本に積極的に関わっている。実際に自分の身に起きたエピソードを再現している。ブリジット・バルドー自身による“助けて!”という悲痛な叫びが描かれた作品といえるが、それは同時に極めて自傷的な創作ともいえる。文字通り“私生活”を削る非常に危険な行為。『花嫁はあまりにも美しい』(56)で演じたピンナップスター役など、ただでさえブリジット・バルドーの映画には、あたかも本人をモデルにしたかのような映画があった。これを繰り返していたら心身がもたないだろう。ここにはブリジット・バルドーが39歳で映画界を引退した要因がある。




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