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『エイリアン4』世紀末に狂い咲いたグロテスクSF超大作 ※注!ネタバレ含みます

(c)Photofest / Getty Images

『エイリアン4』世紀末に狂い咲いたグロテスクSF超大作 ※注!ネタバレ含みます

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フランスの怪人に立った白羽の矢



 まずいきなりだが、『エイリアン』は『エイリアン3』で完結した。同シリーズの顔であるリプリー(シガニー・ウィーバー)が『エイリアン3』で死んだからである。そこを何とかして『エイリアン4』を作ろうとスタジオ側が動き出したのが出発点だ。そんな無茶からのスタートだったわけだが、幸運にもスタジオは腕のいい脚本家を捕まえる。ジョス・ウェドンだ。彼は後に『アベンジャーズ』(12)で監督・脚本を務め、世界中を熱狂させることになる。「死んだ主人公を復活させて」なんて、どないせっちゅうねん案件だが、若き日のウェドンはクローンでリプリーを復活させることにした。さらにエイリアンと人間、両方の遺伝子を引き継いだ、ある種の強化人間とするアイデアも盛り込む。出来上がった脚本の評判はおおむね上々で、次は監督を探す段になった。スタジオはいろいろと話し合った結果、一人のフランス人に白羽の矢を立てる。それこそがジャン=ピエール・ジュネ監督だった。


 しかし突然のハリウッドからの、しかも『エイリアン』シリーズの監督オファーに、ジュネ監督は困惑した。当時の彼は『デリカテッセン』(91)や『ロスト・チルドレン』(95)で評価を集めていたが、まだ長編映画の経験はその二本だけ。おまけに英語もできない。そして本人も次回作『アメリ』(01)の脚本を書くのに大忙しだった。何より彼はシリーズのファンとして思った。「前作でリプリーが死んでいたけれど……?」


 疑問を胸にアメリカに飛んだジュネ監督だが、脚本を読んで、スタジオ側の説得を受けた結果、「後悔したくないから」と引き受けることにする。初めての大作、初めてのハリウッド、おまけに通訳を通しての仕事だったが、決して気負い過ぎなかった。音声特典では当時の心境をこう語っている。「大規模なCMを撮るくらいの気分で臨んだよ」なんとも余裕たっぷりである。



『エイリアン4』(c)Photofest / Getty Images


 そしてジュネ監督は油断なく仕事の準備を始めた。ハリウッドと言えば、ビジネスの世界。自由はないだろうと考え、せめて制作をスムーズに進めるため、主要なスタッフに馴染のメンバーを集めたのだ。特殊効果のピトフや、撮影のダリウス・コンジ、編集のエルヴェ・シュネイは、いずれも彼と気心の知れた仕事仲間である。


 しかしジュネ監督に嬉しい誤算が起きる。それは思った以上にスタジオ側がジュネ監督を尊重してくれたことだ。彼の監督作の常連であるドミニク・ピノンは、実はジュネ監督が声をかけるより前に、スタジオ側がキャスティングしていた。その他にもジュネ監督が警戒していたような、いわゆるクリエイティブ面での横槍はほとんど入らなかった。ソフトについている音声コメントを聞く限りでは、脚本の修正は何度も行ったそうだが、それらは基本的に予算の問題からだった。つまり「納期と予算さえ守ってくれればOKよ」という、比較的自由な現場だったらしい。ちなみにグロテスクなシーンについても「若者は派手なシーンが好きだから」という非常にザックリした若者観で、むしろスタジオ側から推奨された。


 それは納期と予算は守ったうえで無茶をやるタイプのジュネ監督には、ピッタリの現場だった。彼はその腕を存分に振るうことになる。そして映画は、シリーズ屈指の異形の作品へと突き進んでいった。




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