魅力は、身も蓋もなさにあり
『エイリアン4』は非常に特殊な映画だ。エイリアンでも人間でもないクローン・リプリーの自分探しや、勝手な都合で産み落とされたニューボーンの悲劇は胸を打つ。そしてジュネ監督が言うところのユーモアもある。このあたりは間違いなくジュネ監督の個性だろう。一方で、途中で炸裂するアクションのキレや、精密な模型を使った特殊効果などは、まさに90年代のハリウッド大作である。血まみれでグロテスクだが、確かにエンターテインメントなのだ。エイリアンと人間が合体しているクローン・リプリーよろしく、この映画も本来は合体しないものが合体してしまった感がある。この点が『エイリアン4』の最大の個性だろう。ちょっと血まみれすぎるのが人を選ぶが、これもまたエイリアンだと胸を張れる映画である。
『エイリアン4』(c)Photofest / Getty Images
それでは最後はジュネ監督の言葉で締めくくろう。オーディオコメンタリーで、本作を評して監督はこんな身も蓋もない発言をしている。しかし、この身も蓋もなさにこそ『エイリアン4』の魅力が詰まっているように思えてならない。監督がこう思うほど、徹底的にグロテスクな方向を極めたからこそ、その後の『エイリアン』は違った方向を模索することになったのだろう。そしてそれはホラーへの原点回帰と、それでいて残酷シーンが少ない『ロムルス』へと繋がったのだと言える……かもしれない。
シリーズを極北まで導いたジャン=ピエール・ジュネ監督の身も蓋もないコメント、それは……。
「撮影から2~3年後にこれを見直して、今回も見直しているけど、すごく気持ち悪いね」
参考文献:
・「キネマ旬報(1998年4月上旬号)」
・PREMIERE プレミア日本版 創刊号
文:加藤よしき
本業のゲームのシナリオを中心に、映画から家の掃除まで、あれこれ書くライターです。リアルサウンド映画部やシネマトゥデイなどで執筆。時おり映画のパンフレットなどでも書きます。単著『読むと元気が出るスターの名言 ハリウッドスーパースター列伝 (星海社新書)』好評発売中。
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(c)Photofest / Getty Images