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『フル・モンティ』90年代イギリスを代表する傑作ヒューマン・コメディ

(c)Photofest / Getty Images

『フル・モンティ』90年代イギリスを代表する傑作ヒューマン・コメディ

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アカデミー賞を獲得したアン・ダドリーの音楽と選曲



 この映画はけっしてミュージカルではないが、ストリップの練習場面が何度か出てくるせいか、各場面で音楽が重要な役割を果たしている。主に70年代のなつかしい曲が中心になっている。


 まず、夜にガズが車の前で初めて踊りらしい踊りを披露する場面で流れるのが、ホット・チョコレートの「ユー・セクシー・シング」。それを見ていたガズの幼い息子はいたたまれない気持ちになってしまう。


 オーディションの場面で流れるのはセルジュ・ゲンズブールとジェーン・バーキンの「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」。しかし、この時の参加者は脱ぐ勇気がなく、退散してしまう。ほぼ老人になりかけているミスター・ホースはダンスが得意と豪語し、ウィルソン・ピケットの「ダンス天国」で奇妙な踊りを見せる。


 また、デイヴがスーパーから万引きしたビデオ『フラッシュダンス』(83)を見て、アイリーン・キャラの「フラッシュダンス…ホワット・ア・フィーリング」が流れる踊りの場面で、一同はダンスのコツをつかもうとする。


 職安のラインに並びながら、流れる曲に思わず体をゆすってしまう。そんなユーモラスな名場面に流れるのが、70年代のディスコ・クイーンことドナ・サマーの「ホット・スタッフ」。そこで元管理職の上司、ジェラルドが意外な動きを見せる。


 初めて人々の前で練習する時の曲は「ロックンロール・パート2」(ゲイリー・グリッター)。最近は『ジョーカー』(19)の有名な階段パフォーマンスの場面でも知られる曲だが、『フル・モンティ』ではただ笑うしかない。



『フル・モンティ』(c)Photofest / Getty Images


 そして、ハイライトともいえるストリップの場面では、トム・ジョーンズの「帽子はそのままで」。オリジナル曲はシンガーソングライターのランディ・ニューマンで、彼のバージョンはかなり渋いが、ジョーンズのバージョンはすごくエモーショナルかつエネルギッシュ。監督によると、奥さんがこの曲を推薦して使うことになったそうだが、撮影の時はジョー・コッカーのバージョンを流していて、あとでジョーンズが新たに録音したものに変えた、と語っていた。


 ストリップの場面は「撮影は1回だけ」という条件で、800人の女性たちを前に俳優たちがアルコールをあおった後に熱演を披露。臨場感を出すため、観客たちもお酒を飲み、興奮状態を作り出すことで、あの名(迷?)場面が生まれたという。


 全体の音楽を担当しているのは元アート・オブ・ノイズのアン・ダドリーで、どこかユーモラスで悲哀もある音楽を作り上げて、アカデミー作曲賞を受賞している。この映画の大ヒットで、サントラ盤も好セールスを記録した。これ以外にもシスター・スレッジの「ウィー・アー・ファミリー」、スティーヴ・ハーレイ&コックニー・レベルの「メイク・ミー・スマイル」等が使われている。





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