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『4匹の蝿』ダリオ・アルジェントの実生活を引き写したかのような、鮮血の悪夢

©1971 SEDA SPETTACOLI ALL RIGHTS RESEVED. ©SURF FILM SrI ALL RIGHTS RESERVED.

『4匹の蝿』ダリオ・アルジェントの実生活を引き写したかのような、鮮血の悪夢

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ロベルト=ダリオ・アルジェント



 ダリオ・アルジェントのやりすぎ演出は、脇役のエキセントリックな造形にも及んでいる。周りから「神様」と呼ばれ、ハレルヤの音楽にのせて登場するディオ(バッド・スペンサー)。これまで事件をロクに解決したことがないと豪語する、私立探偵のアロージオ(ジャン=ピエール・マリエール)。そして、いつもメガネがずれているおかしな郵便配達人。みんな一目見たら忘れられない存在感の持ち主で、不思議なユーモアを醸し出している。


 その一方、ロベルトは明らかに主人公として存在感が薄い。罪のない郵便配達人を殴り倒すわ、妻のいとこのダリア(フランシーヌ・ラセット)と浮気を重ねるわ、道徳的・倫理的にも共感しにくいキャラクターだ。演じているのは『ふたりの誓い』(70)などで知られるマイケル・ブランドン。しかし、当初ロベルト役として候補に上がっていたのは、シンガーソングライターのジェームス・テイラーだった。ミュージシャンの役なのだから、演じるのもミュージシャンが良いはず。ダリオ・アルジェントはシンプルにそう考えたのだという。



『4匹の蝿』©1971 SEDA SPETTACOLI ALL RIGHTS RESEVED. ©SURF FILM SrI ALL RIGHTS RESERVED.


 結局このキャスティングはナシになり(ちなみにジェームス・テイラーは同年、ビーチ・ボーイズのデニス・ウィルソンとの共演で『断絶』というロードムービーに主演している)、『コレクター』(65)でサイコ・キラーを演じたテレンス・スタンプや、『じゃじゃ馬ならし』(67)や『ロミオとジュリエット』(68)などのシェイクスピア作品で頭角を表したマイケル・ヨークにも打診したが、断られてしまう。最後の最後で決まったのが、マイケル・ブランドンだったのだ。


 今考えてみると、この配役は非常に意味深といえる。彼の容貌はダリオ・アルジェントによく似ている。そして妻ニーナ役のミムジー・ファーマーは、アルジェントの前妻マリサ・カサーレに似ていた。破綻したアルジェントの結婚生活が、まるで鏡のように『4匹の蝿』に映し出されている。


 ダリオ・アルジェントの実生活を引き写したかのような、鮮血の悪夢。『4匹の蝿』というフィルムに刻まれているのは、白昼夢的非日常ではなく、ありのままの日常だったのである。


(*)「恐怖 ダリオ・アルジェント自伝」著:ダリオ・アルジェント、フィルムアート社


参考文献:「ダリオ・アルジェント: 恐怖の幾何学」著:矢澤利弘、ABC出版



文:竹島ルイ

映画・音楽・TVを主戦場とする、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」(http://popmaster.jp/)主宰。



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『4匹の蝿』

「ダリオ・アルジェント 動物3部作」

11月8日(金)より新宿シネマカリテ、菊川Stranger、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開!

提供・配給:キングレコード+Cinemago

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