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『愛のメモリー』あらゆるオブセッションが絡み合う、アンチモラルなラブストーリー ※注!ネタバレ含みます。

(c)Photofest / Getty Images

『愛のメモリー』あらゆるオブセッションが絡み合う、アンチモラルなラブストーリー ※注!ネタバレ含みます。

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※本記事は物語の結末に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。


Index


時空を超えたラブストーリー



 『ファントム・オブ・パラダイス』(74)、『キャリー』(76)という両傑作の間に挟まれる形でひっそりと公開された、『愛のメモリー』(76)。ブライアン・デ・パルマのフィルモグラフィーの中でもあまり顧みられることの少ない小品だが、筆者は極めて重要な映画だと考えている。デ・パルマが敬愛するアルフレッド・ヒッチコックからの影響が濃厚に刻印された映画だからだ。『愛のメモリー』の原題は『Obsession(オブセッション)』だが、それはまさにデ・パルマのヒッチコックに対する<強迫観念>に他ならない。


 そしてこの物語は、完全にヒッチコックの傑作『めまい』(58)を参照している。刑事を辞めたばかりの主人公スコティ(ジェームズ・スチュワート)は、身辺調査を依頼されたマデリン(キム・ノヴァク)を愛するようになるが、転落事故で彼女は帰らぬ人に。失意に暮れるスコティのもとに、彼女に瓜二つのジュディという女性(キム・ノヴァク)が現れて…というのが、『めまい』のざっくりとしたあらすじである。


 一方の『愛のメモリー』は、こんな感じ。やり手の実業家マイケル(クリフ・ロバートソン)は、結婚10周年を迎えた記念の夜に、妻エリザベス(ジュヌヴィエーヴ・ビュジョルド)と娘エイミーを誘拐事件で失ってしまう。やがて十数年の時が過ぎ、仕事でフィレンツェを訪れたマイケルは、亡き妻に生き写しの女性サンドラ(ジュヌヴィエーヴ・ビュジョルド)と出会う。恋に落ちた二人は婚約を果たすが、忌まわしい誘拐事件が再び繰り返されてしまう。


『愛のメモリー』予告


 『愛のメモリー』のアイデアは、ブライアン・デ・パルマとポール・シュレイダーとの会話の中で生まれた。ポール・シュレイダーはもともと映画評論家として活動していたが、シドニー・ポラック監督の『ザ・ヤクザ』(74)で脚本家デビュー。その後はマーティン・スコセッシ監督の『タクシードライバー』(76)、監督も務めた『アメリカン・ジゴロ』(80)と話題作を次々に手がけ、先鋭的なクリエイターの一人と目されていた。彼はインタビューで当時のことをこう述懐している。


「私たちは座って話していた。小津安二郎の『秋日和』や(アルフレッド・ヒッチコックの)『めまい』について語ったりして、映画の構想を練っていたんだよ。最も興味をそそられたのは、観客を驚かせることなく、時間の境界線を越えることができれば、非常に強いラブストーリーが作れる、というコンセプトだった。そのラブストーリーは、観客が未来に行くことを許してくれるような、強いものであるべきだとね」(※)


 “時空を超えたラブストーリー”。そう、この映画はミステリー映画である前に、強烈なひねりを効かせた恋愛映画なのである。




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