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『サスペリア』(77)光の三原色に彩られた、血みどろの白雪姫

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『サスペリア』(77)光の三原色に彩られた、血みどろの白雪姫

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『サスペリア』あらすじ

ドイツのバレエ名門校に入学したスージー。入学早々、彼女の周囲で奇怪な現象が多発し、次々と人が殺されていく。スージーは学校に隠されていた秘密を暴き、一連の出来事が魔女の仕業だと突き止めるのだった。


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ダリオ・アルジェントが初めて手がけたオカルト・ホラー



 筆者はホラーが苦手である。とっても苦手である。めちゃくちゃ苦手である。理由は極めて明白。中学生の時に、深夜のテレビ放送で『サスペリア』(77)を観てしまったからだ。映画のキャッチコピーは「決してひとりでは見ないでください」だったにも関わらず、真っ暗な部屋で一人『サスペリア』をガン見し、身が凍るような恐怖体験を味わったことを、昨日のことのように覚えている。本作は、筆者のトラウマ映画である。今回この原稿を書くにあたって、意を決して数十年ぶりに見直してみたが、やっぱりとてつもなく怖かったです。


 何が具体的に怖いのかは後述するとして、まずは映画の成り立ちから見ていこう。監督は、イタリアを代表するホラー映画の巨匠、ダリオ・アルジェント。魔女だの悪魔だの、この御仁は黒魔術的な題材ばっかり取り上げている印象があるが、意外なことにこの『サスペリア』が初めてのオカルト・ホラー。それまで彼は、ジャッロ(ジャーロと表記されることもアリ)と呼ばれるサスペンス映画の名手として鳴らしていた。


『サスペリア』予告


 ジャッロはイタリア語で「黄色」という意味で、犯罪小説を扱っていたペーパーバックの表紙が黄色だったことから、この呼称が流通した。映画におけるジャッロの特徴といえば、血みどろで残虐な殺人、精神的に異常な犯罪者、そして謎解き要素。そう、強烈なビジュアルが先行しすぎてなかなか気づきにくいが、実は探偵小説的な骨格が備わっていることがミソなのである。


 ダリオ・アルジェントの初期作は、すべて謎解きのエッセンスを含んでいた。処女作の『歓びの毒牙』(70)も、続く『4匹の蠅』(71)も、猟奇的連続殺人事件の犯人を主人公が追いかける構造。典型的な「フーダニット」(誰が犯行を行ったか)なのである。『サスペリア』とは全く無関係なのに、配給会社の思惑によって続編として売り出されてしまった『サスペリアPART2』(75)も、オカルト的要素ゼロの純粋なジャッロだった(霊能力者は登場するが、超自然現象は起こらない)。


 ヒットが見込めるジャンルとしてイタリアで爆発的につくられたジャッロだったが、アルジェントは新しい映画の方向性を見出そうと苦慮していた。幻想小説の第一人者H.P.ラヴクラフトの小説をもとに、アメリカで映画を撮る計画もあったが、結局立ち消えになってしまう。そんな彼にヒントを指し示したのが、『サスペリア』の共同脚本家であり、アルジェントの公私にわたるパートナー、ダリア・ニコロディだった。





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