ダリア・ニコロディの祖母から聞いた、魔女の物語
ダリア・ニコロディは、ローマの演劇学校で芝居を学び、テレビ・映画を中心に活躍していた女優。『歓びの毒牙』を観てアルジェントの才能に心底惚れ込み、彼の作品に出演したいと熱望していた。念願叶って、オーディションの末『サスペリアPART2』の新聞記者ジャンナ役をゲット。尊敬の念がいつしか恋愛感情となり、撮影中にアルジェントと恋に落ちてしまう。映画完成後に、娘のアーシアを出産(アーシアはその後女優となり、『トラウマ/鮮血の叫び』(93)や『サスペリア・テルザ 最後の魔女』(07)など、父親の作品に多数出演)。正式な結婚をすることはなかったが、その後もアルジェントにインスピレーションを与えるミューズとして、彼を支える存在になっていたのである。
当時の映画界は、『エクソシスト』(73)や『オーメン』(76)の大ヒットでオカルト・ブームに沸いていた。もともと超自然的なモノに対して人一倍興味のあったニコロディは、アルジェントに本格的なオカルト映画の製作を提案する。彼女には、かつて祖母から話を聞いた具体的なストーリー・プランがあった。彼女の祖母は若い頃にピアノの学校に通っていたのだが、放課後になると魔術についての授業があったというのだ(⁉︎)。
『サスペリア』(C) VIDEA S.P.A.
少女、音楽学校、黒魔術。ゴシック・ホラーにふさわしい道具立てではないか!アルジェントとニコロディは、ピアノ学校をバレエ学校に移し替えて具体的なプロット作りに取り掛かる。脚本の執筆にあたっては、トマス・ド・クインシーの小説『深き淵よりの嘆息』も大きなインスピレーションの源泉になった。彼女はもともとクインシー作品の愛読者で、この作品に登場する3人の魔女が『サスペリア』、続く「魔女3部作」の2作目『インフェルノ』(80)の下敷きとなったのだ。
『サスペリア』は、ダリア・ニコロディ(&その祖母)の多大なる貢献によって産み落とされた作品なのである。