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『サスペリアPART2』論理性よりも幻想性。深紅に染め上げられたミステリー

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『サスペリアPART2』論理性よりも幻想性。深紅に染め上げられたミステリー

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『サスペリアPART2』あらすじ

ローマで開催された欧州超心霊学会では、超能力を持つヘルガが、突然錯乱し、かつて残虐な殺人を犯した人間が会場内にいると宣言する。その後、部屋に戻ったヘルガは、何者かに惨殺される。偶然その瞬間を目撃したイリギス人のピアニスト、マークは、コートの男が逃げてゆく姿を目撃する。事件に興味を持った女性記者ジャンナは、マークに接近。二人は事件の謎を解こうと行動をともにする。


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ジャッロの世界に舞い戻ったアルジェント



 有名な話だが、『サスペリアPART2』(75)は『サスペリア』(77)の続編ではない。原題は“深紅”を意味する『Profondo Rosso』で、そもそもタイトルからして全然違う。日本では劇場公開されていなかったのだが、『サスペリア』のヒットを受けて「続編として売り出せば客を呼べるだろう」と配給側が判断。本国イタリアの公開から3年経過した1978年に、『サスペリアPART2』というタイトルで公開されてしまったのだ。むしろ『サスペリア』は、『インフェルノ』(80)、『サスペリア・テルザ 最後の魔女』(07)と続く「魔女3部作」の第1作目。続編という意味では『インフェルノ』の方が妥当なのだ(あーややこしい)。


 日本ではひどい扱いとなってしまった『サスペリアPART2』だが、そんなことを蹴散らすくらいに、本作は問答無用の傑作である。間違いなくダリオ・アルジェントの代表作と言っていい。その理由の一つは、『サスペリアPART2』が彼にとって“原点回帰”の一作となったからだろう。


『サスペリアPART2』予告


 『歓びの毒牙』(70)で映画監督デビュー以降、『わたしは目撃者』(71)、『4匹の蝿』(71)と、ダリオ・アルジェントはジャッロと呼ばれるサスペンス映画の名手として鳴らしてきた(ジャッロに関しては、拙稿 「『サスペリア』(77)光の三原色に彩られた、血みどろの白雪姫」で言及しているので、興味のある方はこちらをご一読ください)。


 だがアルジェントは、4作目となる『ビッグ・ファイブ・ディ』(73)で方向転換を図る。これまでの作風と打って変わって、19世紀のミラノを舞台にしたコメディ映画を撮ったのだ。アルジェントはスリラーとは異なる新たなフィールドで、自分の力量を試したくなったのである。


 だが結果は散々だった。観客は入らず、批評家は完全無視。おまけに題材があまりにもローカルすぎたことから海外配給されず、イタリア本国のみで公開されるという憂き目にあう。次は必ず汚名返上しなくては。『ビッグ・ファイブ・ディ』の興行的失敗を受けて、アルジェントは再びジャッロの世界に舞い戻る決心をする。その起死回生の一作が、『サスペリアPART2』だったのだ。


 窮地に立たされた時に大切なのは、原点に戻ること。かのサー・アルフレッド・ヒッチコックも、『舞台恐怖症』(50)の酷評を受けてから、傑作と名高い『見知らぬ乗客』(51)を作った経験があるが、対談本「映画術 ヒッチコック/トリュフォー」でこんなお言葉を述べている。


 「確実な地点に戻ってやり直す(ru for cover)という鉄則が功を奏した訳だよ」



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