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『サスペリアPART2』論理性よりも幻想性。深紅に染め上げられたミステリー

© 1974 MEDIASET

『サスペリアPART2』論理性よりも幻想性。深紅に染め上げられたミステリー

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ゴブリンとの初コラボレーション



 音楽面でも、これまでとは違うアプローチを試みた。過去のアルジェント作品の作曲を主に手がけてきたのは、巨匠エンニオ・モリコーネ。だがこの二人は、決してソリが合った訳ではない。アルジェントが曲の書き直しを命じて、大御所を激怒させてしまうこともあったとか。ダリオ・アルジェントの音楽的嗜好が流麗なオーケストラ・サウンドではなく、ヘビーなプログレッシヴ・ロックであることは間違いない。『4匹の蝿』では、ディープ・パープルに音楽を依頼しようとしていたくらいだ。


 『サスペリアPART2』ではジョルジョ・ガスリーニが作曲を担当していたが、案の定アルジェントは「もっとロックな音楽が欲しい」と言い出す始末。彼はサントラ担当プロデューサーのカルロ・ビクシオに、ピンク・フロイドエマーソン・レイク・アンド・パーマーのような大物バンドを呼んでこい、と駄々をこねたのである。



『サスペリアPART2』© 1974 MEDIASET


 頭を抱えたビクシオは、アルジェントにチェリー・ファイブという新進気鋭のバンドを紹介する。彼はチェリー・ファイブのプロデューサーでもあったのだ。メンバーのクラウディオ・シモネッティへのインタビューを引用してみよう。


 「プロデューサーが、『大物バンドを呼ぶ前に、自分がプロデュースしているバンドを聴いてみないか?』と言ってくれてね。スタジオに到着したアルジェントも、『彼らはとてもいいね。やらせてみよう』となったんだ。ジョルジョ・ガスリーニの曲をアレンジすることになったんだけど、彼がアルジェントと揉めて映画を降板してしまった。彼がいなくなって、映画のメインテーマが必要になったんだ」(クラウディオ・シモネッティへのインタビューより引用)


 ガスリーニが作った曲を演奏するために呼ばれたチェリー・ファイブは、オリジナル・スコアも担当することになった。あの有名なテーマ曲(「サスペリア2のテーマ 赤い深淵」)は、偶然の成り行きで出来た作品だったのである。結果的に映画は大ヒットし、サントラ盤は売れに売れまくった。イタリアのチャートで15週連続1位を記録し、アルバムは100万枚を超えるセールスに。


 これをきっかけに、チェリー・ファイブはバンド名をゴブリンに変更。その後も続くゴブリンとアルジェントとのコラボレーションは、ここから始まったのである。




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