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『サスペリアPART2』論理性よりも幻想性。深紅に染め上げられたミステリー

© 1974 MEDIASET

『サスペリアPART2』論理性よりも幻想性。深紅に染め上げられたミステリー

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“観客が共感できるような生々しい痛み”



 ダリオ・アルジェントは『サスペリアPART2』のシナリオ作りにあたって、ベルナルディーノ・ザッポーニに助力を依頼する。ザッポーニといえば、『フェリーニの道化師』(70)、『フェリーニのローマ』(72)、『カサノバ』(76)など、後期フェデリコ・フェリーニ作品を支えた名脚本家。オムニバス映画『世にも怪奇な物語』(68)では第3話 『悪魔の首飾り』の脚本を担当し、ホラーにも精通していた。二人は試行錯誤しながら、これまでにない恐怖表現を模索する。


 アルジェントとザッポーニが辿り着いた答えは、“観客が共感できるような生々しい痛み”。映画において、銃で撃たれたりナイフで刺されたりするのは当たり前の表現だが、我々の日常生活においてそんな経験はまずない。あくまで頭で想像するだけの恐怖だ。だけど、熱いお湯でやけどをしたり、誤って家具に足をぶつけたりすることはあるはず。「日々の生活にあるような、皮膚感覚で理解できる恐怖を描こう」と考えたのだ。



『サスペリアPART2』© 1974 MEDIASET


 映画の中盤で、「女性が熱湯の入ったバスタブに頭を押し付けられる」というイヤーな惨殺シーンがあるが、その熱さ、痛みを我々が知っているからこそ、恐怖が倍増する。ジョルダーニ教授(グラウコ・マウリ)が殺されるシーンなんぞ、「思いっきり歯を家具に叩きつけられる」という想像もしたくもない描写だ。


 アルジェントはこの脚本をノリノリで書いたようで、父親のサルバトーレと兄のクラウディオに読ませた時には、長さが500ページ以上もあったそうな。「あまりにも長すぎる」と忠告を受けて300ページほどに短縮したそうだが、彼はそれだけこの脚本に自信を持っていた。彼のインタビューにも、その自負が伺える。


 「撮っているうちに、自分が何をしたいのかがはっきりしてきた。とてもリラックスしていて、ストレスはまったくなかったよ。ストーリーは美しく、2・3日で難なく書き上げた。奇跡的なことだね。映画を観れば、監督がどんな気持ちで作っていたのかが分かるはずだ」(ダリオ・アルジェントへのインタビューより引用)




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